デンマークのビルンにあるレゴ本社の研究施設「Creative Play Lab」で開発されたスマートブロックが、2026年3月から発売される。この革新的なブロックにはセンサーと小型半導体チップが内蔵され、動きや方向、磁場に反応する。レゴ史上最も大胆な商品の一つとして期待され、スター・ウォーズセットなどと連動して光や音で遊びを拡張する。開発を率いたトム・ドナルドソンは、子どもの遊び方を考慮し、小さなテクノロジーの欠片と互換性のあるシステムを目指した。
わたしはいま、デンマークのビルンにあるLEGO(レゴ)本社の奥深くの研究施設「 Creative Play Lab 」のプライベートオフィスにいる。 謎のベールに包まれたこの部署は、ビルンのほかロンドン、ボストン、そしてシンガポールに拠点があり、237人のスタッフを抱えている。
世界最大の玩具メーカーが次に世に送り出すものについて考える、そのことだけのために設けられた場所だ。 目の前のシンプルな白いテーブルの上には、レゴのスマートブロックの試作品がひとかたまり載っている。 その最終形態は、小さいながらも優秀な頭脳を備えた、センサー搭載の黒い2×4ブロックだ。 これらの試作品を目にした部外者はいない。
それらの一つひとつが、過去8年間にレゴ社がたどってきた道筋のさまざまな局面を象徴している。 この新機軸の商品は、2026年3月1日から店頭に並んでいる[日本では4月現在まだ発売されていない]。 レゴ社としては、同社のプラスチック帝国の未来がこれによって安泰になることを願っている。 完成品のスマートブロックには、その小ささからは想像できないほど、桁外れに優れた技術が詰まっている。
内部には特製の小さな半導体チップがあり、それがオーダーメイドのソフトウェアを動かしている。 そしてそのソフトが、実装されているセンサー群とやり取りをしながら周囲の情報を集め、動きや方向、そして磁場に反応するのだ。 このスマートブロックは、イエンス・ニゴール・クヌーセン以降、レゴ社が生み出したなかでも最も大胆な商品のひとつだと言っても誇張ではないだろう。 クヌーセンは約50年前にミニフィギュアを生み出し、長きにわたりレゴのチーフデザイナーを務めていた人物だ。
スマートブロックを発案したのは、上級副社長であり、レゴグループのCreative Play Labを率いるトム・ドナルドソンだ。 Creative Play Labは外部企業であるCambridge Consultantsと共に、長い年月をかけて幾度もの前進、失敗、試行錯誤、そしてブレイクスルーを経験してきた。 とはいえ、わたしの目の前のテーブルに載っている試作品の数々──回路基板、接着されたブロック、剝き出しのケーブル、そして頭部を取り外されたミニフィギュアたち──は、完成品からはほど遠い姿をしている。
だが、新しいスマートプレイシステムによって、「スター・ウォーズ」セットの数々が光と音で命を吹き込まれる様子を、世間の人々は目にすることになる。 ダース・ベイダーのタイ・ファイターはすさまじいエンジン音を響かせ、あなたが機体を傾けたり上昇させたりするたびに音程を変化させる。 玉座の間のセットは、動きに反応して鳴るライトセーバーの音を聞かせるし、「インペリアル・マーチ」も、なかなかの出来栄えで演奏してくれる。 もちろん、新しい“スマート”Millenium Falconもある。
スマートブロックの加速度計を使うことで、自分の手でハイパードライブを発動できるというこの宇宙船には、ほかにも驚きの仕掛けがいくつも備わっている(なかには、隠されていて、遊びながら見つけていかなければならないものもある)。 ルークのX-34ランドスピーダーはいかにもSFらしい高音のエンジン音を発するが、墜落したり燃料補給を試みたりすると、その状況に応じて異なる音を発する。 ドナルドソンがこの革新的なスマートブロックのアイデアを思いついたのは何年も前、2017年のクリスマス休暇中のことだった。
彼は、家──プラスチックの家ではなく、本物の家──で、ひどく退屈な作業をしていた。
「壁が湿気で弛んでいた部分があったので、チゼルドリルで漆喰を全部はがしているところでした」とドナルドソンは語る。 「ものすごく退屈していると、創造的なアイデアが湧いてくることがあるでしょう。 あれはまさにそういう瞬間でした」 一連の“カギとなる洞察”を得たとき、ドナルドソンはレゴのプレイセットをインタラクティブにする方法について考えを巡らせていた。 そして、何よりもまず、テクノロジーの大きな塊ではなく、小さなテクノロジーの欠片が数多く必要なのだということに気づいた。
「子どもたちは、大きなものひとつだけで遊んだりはしません」とドナルドソンは話す。 「それではすぐに退屈してしまいます。 子どもというのは、いろんなものをたくさん使って遊ぶものです。 だから、子どもたちがたくさん手にできるようなものが必要でした」 ふたつ目の洞察は、それがひとつのシステムでなければならないということだった。
つまりスマートブロックには、すべてのプレイセットと互換性が備わっていなければならないということだ。 レゴブロックのようなものにテクノロジーを組み込むには、越えなければならない技術的なハードルがいくつもあった。
「ワイヤレス充電についても考える必要がありました。 もし中に電池を入れる方式にしたら、親たちにとっては悪夢のようなことになりますから。 それに、言うまでもなくペアリングの問題もあります。 子どもたちがじっと座って、3つの装置をペアリングしていく、なんてことをするわけがありませんからね」 ドナルドソンはただちにこの計画に着手したが、技術的な問題を解決するまでには、当初の予想よりも何年も長くかかってしまったと明かす。
レゴは、これまでも何度かインタラクティブなおもちゃの試みに取り組んできた。15年の「LEGO Dimensions」は、テレビゲームのコンソールと融合させたものだった。19年の「LEGO Hidden Side」はAR(拡張現実)技術を活用し、モバイルアプリを使うと隠れたデジタル世界が見えるようになったり、さらにゲーム内イベントが発生したりするというものだった。 20年には、Bluetooth対応の「LEGO Super Mario」が登場した。15年に始まった任天堂との話し合いが実を結んだ結果だ。 それからもちろん「LEGO Mindstorms」がある。
これはレゴブロックでできたプログラム可能なロボットで、最初に導入されたのは1998年だが、2022年末に生産中止となっている。 だが、これらのどれひとつとして、レゴの「System in Play」を上回る結果を打ち立てたものはない。
「System in Play」は、ゴッドフレッド・キアク・クリスチャンセンが1955年に発明したもので、今日われわれが知っている、互いにくっつき合うレゴブロックの基礎となっているシステムだ。 いまなおクリスチャンセン家が所有するデンマーク企業のレゴ社は、それ以降、売上高において世界最大の玩具ブランドという地位を確立してきた。 その業績はライバル企業のMattelやHasbroを凌駕している。 24年にはレゴの売上高は118億ドル(約1兆8,000億円)に達した。 これはその年のモナコ公国のGDPよりも大きな数字だ。
同時に、一般消費者向けの売上も二桁成長を記録している。 レゴグループのデザイン部門および新規事業部門を率いるウィリアム・ソログッドは、これまでのインタラクティブ性への取り組みについて独自の見方をしている。
「それぞれの寿命が短かったのは、すべてスタンドアローン型だったからなんです」とソログッドは話す。 「壁で囲まれた庭の中の存在だったんですね。 ですが(レゴブロックでは)すべてのブロックが別のブロックと組み合わせられます。 本質はそこにあるんです。
周囲にガードレールを張り巡らせて孤立させた途端に、想像力が限定されてしまうということです」 スマートブロックがこれまでと異なるのは、その点にある。 つまり、スタンドアローン型のシステムではないということだ。 スマートブロックは、レゴブロックの世界にそのまま統合されるように設計されている。
しかも、コントロール用の画面の使用は禁じ手とされている。 8スタッドのブロックには、LEDアレイ、加速度計、光センサー、音センサー、小型スピーカー、ワイヤレス充電可能なバッテリー、アナログシンセサイザー、そして髪の毛ほどの細さの導線コイルアセンブリーが詰め込まれており、それらすべてをアナログ回路とデジタル回路の両方を搭載した4.1mmの特製ミックスドシグナルASIC半導体チップがコントロールしている。 そのチップの上で動いているのはオーダーメイドのソフトウェアで、それに命令を送っているのが、NFC(近距離無線通信)技術を用いたタイル型スマートタグとスマートミニフィギュアだ。
遊んでいるあいだ、多数のスマートブロックが互いにやり取りするようになるのが目標だった。 そこでレゴ社は、独自の「ブロック間位置検知システム(Brick-to-Brick position system)」をつくり上げる必要があった。 これは導線コイルを活用して、距離、方向、そして複数のスマートブロックの位置を感知するシステムだ。 またスマートプレイシステムは、コントロール用の画面なしで機能しなければならない。
そのためこのネットワークは、セットアップもアプリもセントラルハブも外部のコントローラーも必要としない、完全な自己組織システムでなければならなかった。 ネットワークが崩れても自らリセットし、完全に自力で機能し続ける必要があるということだ。 スマートブロック同士でデータを共有するためには、Bluetooth技術を用いた「BrickNet」プロトコルを開発する必要があった。 スマートブロックには、特許を取得した世界初の技術が合計20以上搭載されている。
レゴが助っ人を必要としたのも驚くにはあたらない。 レゴ社はフランスのテック企業Capgeminiの開発チームであるCambridge Consultantsを招き入れ、共同で開発を進めた。 そのチームのテクニカルディレクターであるアンドリュー・ナイツが、ドナルドソンとそのCreative Play Labチームとの共同作業を指揮した。
「子どもたちの遊びを拡張するようなテクノロジーを備えたものをつくりたい。 トムは、そんな構想を抱いていました」とナイツは語る。
「だが、われわれにとって真のモチベーションは、それがれっきとしたレゴ製品でなければいけないということでした。 レゴらしく見え、レゴらしく感じられ、レゴのシステムに忠実なものにしなければならなかったのです」 開発チームは、2週間ごとに試作品を子どもたちの前に置き、その子たちが遊ぶ姿を観察した。 やがてチームは、子どもたちの「ストライクゾーン」に気づくようになった。
「子どもたちが自分たちでコントロールできる何かをしている瞬間を捉えて、そこに刺激を与えることができると、その子たちはそれに熱中していきます」とナイツは語る。 「子どもたちが何をしているかを理解し、それを増幅してやることで、想像力をさらに高めさせるのです」 簡単なことに聞こえるかもしれない──だがナイツとそのチームは、これまでのレゴ社の水準をはるかに超えて、遊びの根本的な文脈を深く理解する必要があることに気づいた。 「子どもたちが何をしているのか、それを本当に理解するには感覚を研ぎ澄ます必要がありました。
その子たちはどのモデルを組み立てたのか? 何が起こることを期待しているのか? そしてそれはどのタイミングで起こるべきなのか? 」とナイツは話す。
「そして次に、そのためにはどんなテクノロジーを使えばいいのか? という大きな課題が浮かび上がりました。 さらに、それらのテクノロジーをテーブルの上に載っているような小さなものの中にどう詰め込むのか、という問題にも取り組むことになったのです」 ナイツは、太ったワニのようなかたちに組み上がったたレゴブロックを手に取る。 何本もの導線が粘着ラバーのブル・タックで留められている。
スマートブロック完成までの物語が始まってからつくられた、第1号の試作品だ。
「開発用の基盤です。 特製のものは何もありませんが、静電容量方式タッチパネルが付いています。 これを掴むと首が回るようにしたんです」とナイツは説明し、これは物理的なインタラクティブ性に関する実験だったと補足する。3時間ほどでつくり上げ、すぐに飛行機でレゴの本社に送ったのだ、と彼は誇らしげに語った。 この太ったワニは人々に強い印象を与えたに違いない。
レゴ社とCambridge Consultantsは、その後1年半にわたってこの方向性を追求していくことになった。 次の大きな飛躍は、2個のレゴブロックにしては巨大なグレーのブロックだった。3Dプリンターでつくったブロックに、インターネット上で誰でも購入できるテクノロジーを詰め込んだものだ。1個には光ブロックを意味する「LB」というラベルが貼られ、先端には光センサーが備わっている。 もう1個は「SB」と呼ばれ、これらは音ブロックを意味する。
「かさばるし見た目も無骨ですが、わたしたちはこいつらのためにハッカソンを開催したんです」とナイツは語る。 「大勢の人を集めて、このふたつのブロックで何か楽しいことをしてみてほしいと告げました。 すると、あっというまに面白いものができ上がってきました──消防車をつくって住宅火災を消し止めたりするなど、この基礎的な機能を使うだけでもいろいろなことができたんです」 子どもたちとの実験でも同じ手応えが得られた。 この方向性は間違っていない、とナイツは確信した。
とはいえ、10×4の重厚なブロックではまったく実用にならなかった。 そこで次の課題は小型化だった。 その解決を助けるために再びハッカソンが開かれ、ナイツとそのチームは40の試作品を手づくりした。
「ふた晚徹夜しましたよ」と彼は話す。 ナイツによれば、コロナ禍における最初のロックダウンのあいだに、核となる基本方針が定まった。 これまで手探りで進めてきたものを、商品として結実させなければならない。 レゴの遊びのシステムである「System in Play」の進化形として、今後何十年も生き続けるものに。
決定的に重要なのは、それがレゴをレゴたらしめているものに適合していなければならないという点だった。 レゴ社は、ハリー・ポッターのミニフィギュアをゼロから製造しているわけではない。 まず莫大な数の白い胴体をつくり、そのうちの一部にだけハリー・ポッターのプリントを施す。 これは製造過程における「後期個別化段階(late dedication point)」と呼ばれる。
スマートブロックも、この同じ製造プロセスに適合しなければならない。 つまり生産システムそのものに変更を加えることなく、既存の製造プロセスで大量製造できるような汎用性をもたせる必要があった。 そこでスマートタグが登場する。
「タグがあることで、製造過程の後半でこんな決定ができるようになるんです。 例えば、『こいつはスター・ウォーズだ──スター・ウォーズのタグを付けよう』という具合に」とナイツは語る。 汎用的なスマートブロックは家庭用ゲーム機の本体、スマートタグはそれに挿し込むカートリッジ式のゲームソフトのようなものだ。
「そういうわけで、わたしたちはICタグ(RFIDタグ)、つまりNFC(近距離無線通信技術)を試していきました──問題なく機能しそうでした」とナイツは説明する。 また、開発チームがミニフィギュアの中にNFCタグを入れ始めたのもこのころのことだ。 ミニフィギュアを入れ替えることで、遊びの流れや動き、反応が変わるようにしたのだ。 ナイツによると、スマートタグは事実上、クレジットカードのタッチ決済と同じ仕組みで動作するという。
「まったく同じ仕組みです。 ただしタグのほうは小さく、メモリ容量もそれほどありません」と彼は話す。
「もともとはカード番号や名義、銀行コードを記憶するために設計された技術です。 けれどもわたしたちは、その小さなメモリの中にうまくエンコードして書き込む方法を編み出しました。 極小のメモリ領域にゲームを書き込んでいた80年代の発想に立ち返り、ここでも同じ原理を使ったのです」 特定の動作や状況に対応する命令をコード化する独自のプログラムをつくり、それをスマートタグに搭載された極小のメモリに収めるのは大変だったのではないだろうか? そう尋ねると、ナイツは椅子からずり落ちそうになりながら言った。
「もちろん、大変でしたよ! 」 「確かに難しかったです。 でも、次から次へと課題を解決していくことこそが、このプロジェクトのすべてでした。 だから、ほとんどゼロに近いメモリ容量にゲームを書き込まなければならないとなったら、わたしたちはただ正面からその課題に挑んでいくだけでした」 ワイヤレス充電の問題に取り組むうちに、別のイノべーションも生まれた。
携帯電話の場合、1台のワイヤレス充電器は1台の端末に対応する。 だがレゴ社が望んだのは、子どもたちが多数のプレイセットを動かしながら、たくさんのスマートブロックで遊べるようにすることだった。
「それで、多くの人々が挫折してきた課題を解決したんです。1台で複数の端末を充電できるワイヤレス充電器を。 ひとつの充電器で、いくつものブロックを同時に充電する。 これはありきたりなものじゃありません」とナイツは話す。 え、ちょっと待って。
それは、アップルが解決できなかったことで有名な課題ではないだろうか。
「そうですよ」。 アップル社にはこのことを伝えたのだろうか?
「いいえ、直接には伝えていません。 わたしたちは、同時に10個のスマートブロックを充電できる試作品をつくりました。 しかも、高出力で充電ができるように設計しました。 モデル全体をそのまま充電用パッドの上に載せて充電できます。
システム全体が、将来の互換性も視野に入れて設計されているんです」とナイツは説明する。 ワイヤレス充電システムは、タグを読み取るシステムの上に組み込まれている。 ひとつのコイルでふたつの役割を果たせるようにするためだ。 つまり、バッテリーを充電すると同時に、ICタグに保存されたコードを読み取るのだ。
これによって、開発チームが「NFCポジショニング」と呼ぶまったく新しい技術が可能になった。 タグがブロックのどの面に取り付けられているのかを識別できるようになったということだ。 レゴブロックで組んだモデルの中心部にスマートブロックを組み込み、そのまま全体を充電パッドの上に置いて向きを変える。 するとそのあいだ、コイルは各ブロックが空間のどこにあり、どの方向に回転しているのかを常に把握し続ける。
この3D測位システムはミリ単位の精度をもち、開発チームが最も誇りにしている機能だ。
「これにいちばん近い技術は、F-16ジェット戦闘機に使われています。 ヘルメットの中の装置が、パイロットがシートに対してどの方向を見ているのかを検知する仕組みです」とナイツは言う。 たとえ十分な空間があり、サイズの制約を気にしなくてよかったとしても、これらすべて実現するのは容易ではない。 だからこそ、すべてをたったひとつのブロックに収めるには特製の半導体チップが必要だった。
開発に何年もかけてつくられたレゴ独自の小型半導体チップは、データ処理とBluetooth通信に加え、バッテリー充電、ワイヤレス充電、測位、NFC(近距離無線通信技術)、データ読み取り、音声増幅器、光制御──つまりスマートブロックのすべての機能──を統括する。 性能やサイズの面で妥協することなく、これらの技術をひとつにまとめるには、この方法しかなかったのだ。
「すべてのテクノロジーを、物理的な限界ぎりぎりまで追い込みました」とナイツは語る。 レゴ社の製造システムもまた、同じように限界まで追い込まれた。 新しい組み立てラインは、スマートブロックとその充電器を大量生産するという課題に直面した。 例えばコイルひとつを取ってみても、直径100ミクロンのワイヤを芯に10回巻き、それを6層構造にしたうえで回路基板に接着しなければならない。
「充電中には電圧が数十ボルトまで上がり、測位センサーを動かすときにはひと桁のマイクロボルトまで下がります」とナイツは説明する。 「つまり、同じ回路基板の同じコイルで、7桁もの電圧差を扱わなければならないわけです。 だから、この種の難題には本当に追い詰められましたね」 このプロジェクトに必要だったのは、単なる技術的な洞察力だけではなく、遊びをまとめ上げる人物、いわば陽気なボスのような存在だった。 レゴグループのデザインディレクターであるマイケル・フラーは、勤続18年。
「『レゴ バットマン ザ・ムービー』には5、6年を費やしました」とフラーは語る。17年に映画が完成し、次は何に取り組もうかと考えていたとき、ドナルドソンから声をかけられたのだった。 「わたしは、自分はこの仕事に向いていないと必死に説明したんです。 テクノロジーにはまったく詳しくないし、どちらかというと古いタイプの人間ですから。 ところがトムはこう言ったんです。
『そうじゃない。 そういう人が必要なんだ。 賢いエンジニアや技術に強い人間はいくらでもいる。 わたしが欲しいのは“おもちゃ屋”なんだ』って」 こうしてフラーはこの役職に就いた。
「最初のころは、ただひたすら概念図を描いていました。 Cambridge Consultantsから壁一面を使わせてもらえたので、そこに『こうしたらどうだろう? 』『ああしたらどうだろう? 』と手描きでアイデアを書き出していったんです」 やがて作業は、手づくりの試作品製作へと移っていった。
フラーの見積もりでは、開発期間全体の半分以上がこの工程に費やされたという。
「かなり少人数のチームでしたし、とにかく粘り強さが求められました」と彼は語る。 その粘り強さが試されたのは、初期にプレリリースされたプレイセット「Smart Brick Jungle Explorers」の生産中止が決まり、その代わりに「スター・ウォーズ」モデルを発売することになったときだった。
「実際に世の中に出ていたんです」とフラーは言いながら、大きな赤文字で「TEST」と書かれた箱をいくつも持ち上げてみせた。 「子どもたちはこれで遊んだんです。 こちらにはフィードバックが返ってきました。 わたしは何晩もかけてそのデータを分析しました。
子どもたちが本当に喜んだのはどの部分なのか、逆にそれほど興味を示さなかったのはどの部分なのかを突き止めようとしたんです」 わたしは長年、新製品として発表されるさまざまな機器について記事を書いてきたが、開発過程でいっさい妥協が行なわれなかった製品というのは、ほとんど見たことがない。 どこかの段階で、ほぼ必ずと言っていいほど、手間を省くためかコストを抑えるため、あるいはその両方の理由で、何かが削られてしまうものだ。 だが、どうやらスマートブロックの場合は違ったらしい。
「『全部やってやろう。 できることは全部盛り込もうじゃないか』と、わたしたちは話し合いました」とナイツは言う。 そして、当初の目標リストにあった機能のうち、その後実現されたものを一つひとつ数え上げてみせた。 シンセサイザーが搭載されたシステム──聞こえてくる音はあらかじめ録音されたものではなく、その場で生成されるものだ。
光や暗さ、色を感知するセンサー──ブロックにはライトが付いており、色を変えるだけでなく、テレビのリモコンのようにほかのブロックと信号をやり取りすることもできる。 ほかにも開発計画が始まった当初には目標リストにすら挙げられていなかった機能が搭載されたものもある。 スマートブロックについての説明が終盤に差し掛かるころには、わたしは大きな衝撃を受けていた。 そこにはレゴブロックの枠を超えた応用の可能性を秘めた技術が開発されていたからだ。
おそらく軍事用途に転用することさえできるだろう。 もちろんレゴ社はそうした分野に間違っても足を踏み入れることはないだろう。 とはいえ、小さなブロックのセットを売って得られる利益をはるかに超える価値を生み出す可能性が、この技術には秘められている。 ドナルドソンはそんなことにはまったく興味がない。
彼自身の言葉によれば、このプロジェクトは最初から利益を目的に動いていたわけではなかった。
「『この事業からはこれだけの収益が確実に見込める』といった話は一度もしていません。 わたしたちはただ、『これが実現できたら、きっとすごいことになるぞ』と話し合っていただけです」 (Originally published on wired.com, translated by Ryo Shinagawa/LIBER, edited by Nobuko Igari) ※『WIRED』によるLEGOの関連記事はこちら。 レゴのスマートブロックが登場──音と光で遊びが進化する レゴとF1がコラボ。
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レゴ スマートブロック Creative Play Lab 子どもの遊び テクノロジー
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