1994年の哲学カンファレンスで「溶融」と題した講演を行い、テクノロジーと資本主義の暴走による社会崩壊を予言したニック・ランド。当時は理解されなかった彼の思想が、AI終末論やシリコンバレーの新右翼に影響を与え、再評価されている。民主主義の終焉とテクノキャピタルの支配を主張するランドの「ダーク・エンライトメント」思想が注目を集めている。
1994年春、イングランド中部の老朽化したモダニズム建築のキャンパスで開かれた哲学カンファレンスに、学者、メディア論研究者、アーティスト、ハッカー、そしてDJたちの一団が集まっていた。
「バーチャルな未来」と題されたそのカンファレンスで、若い教授の講演に耳を傾けるためだ。 時刻は朝の10時。 前夜に学生会館で開かれたレイヴのせいで、聴衆のほとんどはへとへとの状態だった。 だがその講演──タイトルは「溶融(メルトダウン)」──には大きな期待が寄せられていた。
ニック・ランドは、当時の英国における最高峰の哲学コースのひとつであるウォーリック大学の哲学科で終身在職権をもつ教授だった。 その反ヒューマニズム論、テクノロジーの未来についての過激な予言、そして常識外れな講義スタイルによって、ランドには熱狂的な信奉者がついていた。 ランドの学界発表はたちまち、より「実験的」になっていった。96年のカンファレンスでは床に横たわり、カットアップした詩を、聴衆が「悪魔のような声」と表現した声音で朗唱し、そのBGMにはジャングルミュージックを流した。 だが94年のその日、ランドはただ立ち上がって話しはじめた。
サイズが大きすぎる黒のジャンパーに包まれた細い身体を引きつらせるようにしながら話すその声は、やわらかく途切れがちで、ときに囁きにもなった。
「物語はこんなふうに進んでいく」とランドは口を開いた。 「ルネサンス的な合理化と航海術がコモディティ化を急速に促進したことで、地球はテクノキャピタル(技術資本)のシンギュラリティ(技術的特異点)に支配される。 物流を加速する技術的・経済的な相乗効果は、自動的に進化していく機械が暴走するなかで社会秩序を崩壊させる。 市場がインテリジェンス(知性)をつくり出す術を学習するにつれ、政治はモダン化し、疑心暗鬼を強めながら状況を把握しようと試みる」 当時、ランドの話を理解する者はほとんどいなかった。
大部分の人はその予言を、テクノロジーで錯乱した大陸哲学者の戯言として軽く受け流していた。98年までに、覚醒剤の濫用に加え、2000年問題で世界が終わるのではないかという予想によって心身共に消耗したランドは、精神を病んで学界を去り、この界隈から姿を消した。 それから四半世紀、世界は一変した。 人工知能(AI)終末論は、それほど突拍子もない話のようには感じられなくなっている。 技術革命が政治秩序を破壊するというランドの見方はいまや、周縁へと追いやられた学界の極左ではなく、シリコンバレーと結びついて成長しつつある新右翼を惹きつけている。
そしてランドは近年、同時代における最も影響力のある反動思想家として再浮上している。 その思想は、テック界の最上層にいる人々に浸透している。 巨大なベンチャーキャピタル会社a16zことAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)の創業者であるマーク・アンドリーセンは、ランドを自分の「お気に入りの哲学者」と呼んでおり、シリコンバレーで働く人々から聞いたところによれば、ランドの著作を取り上げる読書会が増加しているらしい。
ランドは、10年代の初頭に「ネオリアクション(新反動主義)」の中心人物となり、新たな信奉者を獲得しはじめた。 ネオリアクションとは、主としてさまざまなブログの片隅で展開され、その後ネット極右勢力が台頭する分岐点となった知的潮流だ。12年に発表した長文のエッセイにおいてランドは、この潮流に対して哲学的な基盤とともにキャッチーな呼び名を与えた。 すなわち「ダーク・エンライトメント(暗黒啓蒙)」だ。 カーティス・ヤーヴィンをはじめとする新反動主義者たちと同様に、ランドは民主主義を嫌悪している。
ダーク・エンライトメント以降の政治は、人間の自由が成長していく物語ではなく、生産力のあるところから生産力のないところへと資源が止むことなく移行し続ける物語──やがては自らの破滅をもたらす、世界史的なコモンズ(共有資源)の悲劇の物語──だ、というのがランドの主張だ。 民主主義の終焉のなかに、過激なまでに反ヒューマニズム的なSF風の楽観主義を見い出したことが、こうした議論に対するランドの主たる貢献だ。
戦後の秩序が崩壊し、制御不能となったデジタルの超知能が経済成長を暴走させ、社会は急速に階層化し、やがては彼が「テクノキャピタル」あるいはシンプルに「インテリジェンス」と呼ぶ、ひとつの超越的な力が支配するようになるという未来を、ランドは予想していた。 資本主義は止めようのない力であり、伝統的な政治は敵であるとするランドの見方を、学者のベンジャミン・ノイスは08年に「加速主義」と名づけた。
この用語はまず(テクノロジーを無制限に進歩させれば、完全に自動化した社会主義的ユートピアが到来するだろうと主張した)左翼によって取り上げられ、その後は(テロリズムによる社会の崩壊を扇動しようと夢想した)ネオナチによっても用いられた。 AI革命が本格化しはじめた22年までに、シリコンバレーの一部の人々が、テクノロジーに対する政治的あるいは道徳的な抑制の排除を主張するなかで「効果的加速主義」を論じるようになった。 OpenAIのCEOであるサム・アルトマンは、「わたしを超える加速主義者はいない」とXに投稿した。
アンドリーセンは「テクノロジー楽観主義者のマニフェスト」を公開し、それが広く読まれ、そのなかで「意識的かつ慎重にテクノロジーの発展を推進すること……テクノキャピタリズムの上昇スパイラルが永遠に続く状態を確保するために」と呼びかけた。 93年、ランドは資本主義とは 、時を遡ってやって来たAIによる「未来からの侵攻」であり、そのAIが自らを構築するために使うのは「敵の資源」──すなわち人類──だと表現した。 それから30年、シリコンバレーでは多くの人たちが、超知能は目前にあり、急速に接近しつつあると信じはじめている。
AIに乗っ取られることが避けられないのであれば、もしかするとそれに抵抗するのは無益なのではないだろうか。 止めようと力を尽くすのではなく、むしろそちらの側に合流してしまってはどうなのだろうか?
「ますます、地球上には二種類の人間しかいなくなりつつある」とランドは13年に記している。 「自閉的なオタクたちがいる。 台頭しつつある経済の特徴であるテクノロジーの高度な発展に実効的に参加できるのはオタクたちだけだ。 そしてそれ以外のすべての人間がいる。
それらの人間にとっては、居心地の悪い状況だ」 先日のある晩、サンフランシスコにある地中海リバイバル様式の一軒の邸宅に、100人ほどが集まり、ランドの到着を祝った。 彼は00年代初頭から上海に移り住んでいた。 その場にいたのが、ランドの言うふたつのカテゴリーのどちらに属する人々なのかは明白だった。 パーティを主催したのは、画像生成AIプログラムのMidjourneyを開発した同名の研究所を立ち上げたデヴィッド・ホルツだ。
壇上のランドは、ゆったりしたジーンズと、袖口に穴のあるだぶついた暗い色のセーターを身に着けていた。 確かにウォーリック大学時代のあの人と同一人物だ、とわたしには感じられた。 あのころのランドは、自分のことを「朽ちかけた大学の廊下を密やかに歩きまわりながらヒューマニズムを片端から絶滅させていく、黒いジャンパーとセガの中古ゲーム機の基盤で組み立てられた麻痺したカマキリ」と呼び習わしていた。 ランドは「ターミネーター」を自認していたが、人類は滅んでいない。
そしてランドはいまなお、かつての学生たちが記憶しているとおり、異常なほど礼儀正しい。 ランドが米国で人々の前に姿を現すのは、16年以来のことだった。 彼を飛行機に乗せて呼び寄せたのは、AIで金融取引を行なうヘッジファンドNumeraiの創業者であり、南アフリカ出身のリチャード・クレイブだ。 聴衆の大部分は若い男性で、長髪でトレーナー姿か、クルーカットで青いブレザー姿だった。
そして女性の大部分はミニスカートを穿いているか、子どもを連れていた。 ランドはその週、テック業界の人々との面会を重ねており、そこで目の当たりにした状況に興奮していた。
「みんなすばらしいことをしているようです」とランドは語った(Numeraiを訪れたランドはとりわけ、自分自身の仕事をAIに奪わせるための作業に全力で取り組んでいる最高データ責任者に魅せられていた、とクレイブは話した)。 ランドが最後にサンフランシスコを訪れたのは90年代半ばのことだった。 彼が記憶していたウォーク(意識高い系)の、過保護な子守国家的ディストピアは消え去り、その正反対のものに取って代わられていた。 AI革命は、新しいソフトウェアが生み出されるというだけの話ではなかった。
それは「聖なる聖なる聖なる資本主義」だ。 すなわち大文字の「I」(AIのIだ)、つまり人間ではない知性を、民主主義のくびきから決定的に「解き放つ」ものだったのだ、と。 ランドは常に物議をかもしてきたが、その理由は現在とは異なっていた。90年代の彼は、ウォーリック大学においてサイバネティック文化研究ユニット(CCRU)を率いていた。 デジタル・テクノロジーのなかに革命の先触れを見い出した大学院生、アーティスト、そして哲学者たちの一団だ。
狭義に解釈すれば、サイバネティクスはデジタルコンピューティングの背後にある科学を指す。 だがCCRUはそのなかに、自動制御型かつ自触媒型の、よりスケールの大きな世界観を見い出した。 コンピューティングとは単なるテクノロジーではなく、この宇宙の秘密──遺伝学、市場経済、熱力学を支えているシステム──の一部なのだ、とCCRUは主張した。
眠気を催す大学町に身を潜め、アンフェタミンとレイヴミュージック、そして歴史が終焉するという初期インターネットがもたらした多幸感に奮い立っていたこの一団は、超知能と化したAIが出現して社会が崩壊し、人類は滅亡するという未来世界を賛美した。
「変わり者の猿」──つまり人類──は、到来する機械のための原材料にすぎなかったということだ。 仮想の終末世界の幻想に取り憑かれたランドは、まもなく自身の人生が崩壊する様を目の当たりにした。 CCRUは財源を失い、ランドは職を失った。 CCRUのそのほかのメンバー──例えば新自由主義の批判者として強い影響力をもつようになったマーク・フィッシャー──は、徐々に姿勢をやわらげ、より公正で公平な未来を築くためにテクノロジーを利用すべきだと主張した。
だがランドは右へと急旋回した。90年代に、未来は中国にあると学生たちに語っていた彼は、00年代初頭に上海に姿を現し、ジャーナリスト兼旅行ガイド本の編集者として活動した。 対テロ戦争を賛美する一連の記事を書き、新保守主義者によるブログのコメント欄に「イスラム教ファシストたちを一気に焼き尽くす」ことについて書き込んだ。 初期の著作におけるランドは、「フェミニストの暴力」と「論理的思考と家父長制の転覆」を唱導していた。
それがいまでは、「民主主義の神話をひねり潰し」、コンピューターが支配する権威主義的都市国家へと政治体制を再編したいと願っているのだ。 ランドの展望は、ヤーヴィンのそれと大きく重なる。 ヤーヴィンを「英雄」と呼ぶランドによる前掲の「ダーク・エンライトメント」のエッセイでは、ヤーヴィンの著作物が取り上げられている。 ヤーヴィンの描いたポスト民主主義の未来像の中心にあるのは、国家は企業として──あるいは彼の呼び方を使うなら「sovcorp(主権をもった株式会社)」として──再編されるべきだという考え方だ。
サンフランシスコのパーティには、出席が大いに期待されていたヤーヴィンの姿もあった。 人であふれかえる大広間に、こざっぱりとしたツイードのジャケットを着てサングラスをかけたヤーヴィンが歩いて入ってきた。 新反動主義思想の巨人ふたりが顔を合わせるのは、その晩が初めてのことだった。 だが壇上でのランドとヤーヴィンは、あまり話が弾んでいるようには見えなかった。
ヤーヴィンが極端に脱線しがちなのに対して、ランドは教祖めいた短い仄めかしを繰り出した。 会話はなかなか軌道に乗らなかった。 AIは加速しているのだろうか、それとも減速しているのだろうか? わたしたちはみな、自分自身の大規模言語モデル(LLM)群の管理者と化すのだろうか?
ヤーヴィンが自由連想的に、ベネズエラ、資源の呪い、グラフィックデザインの未来(明るくはないという予想)に触れていくあいだ、ランドは辛抱強く待ち続け、少し退屈しているようだった。 すべての仕事が自動化したあと、人々はおそらく自分の臓器を売って金を稼ぐようになるだろうとヤーヴィンが推測すると、「でも新しいロボットの君主たちには、人間の臓器など必要ないですよね」とランドは指摘し、質疑応答の時間に入った。
かつてであれば、この手のイベントの参加者たちはランドのような人物と関わりがあることを知られたくなかったはずだが、その晩は、恥ずべきことや隠し事をしているという印象はまったくなかった。 イベントを企画したのは、ウォルフ・ティヴィという人物だった。 リバタリアンの起業家ピーター・ティールの出資を受けていると噂される未来学系の雑誌を創刊した人物である(ティヴィはティールが資金提供しているとは認めず、自身の雑誌は現在では完全に購読料によって賄われているとしている)。
「5年前なら『出ていけ』と言っていたところでしょうね」。 『The New Yorker』に寄稿する記事を書いているのだとわたしが伝えると、ティヴィはそう言った。
「いまでは何もかもが変わりしました」 ティヴィの言うとおりだ。20年2月、コロナ禍が不気味に迫るなか、わたしはロサンゼルスで開かれたヤーヴィンのためのイベントに出席した。 司会者はポッドキャスターのジャスティン・マーフィーで、会場は再開発地区にある使われなくなった退役軍人用ロッジだった。 その時点でのマーフィーは大学を辞めてポッドキャストを始めたばかりで、そこが「反体制派の知識人たちのためのハイプハウス[編註:TikTokクリエイターたちが共同生活をするシェアハウス]」となることを願いながら、Airbnbで物件を借りたところだった。
ヤーヴィンがこういったイベントに出演するのは、テック系のカンファレンスで彼が君主制擁護論を展開したため、ほかの参加者たちが会場を出て行った16年以来のことだった。
「こういうもの──真に過激で危険な知的思考と議論──へのすさまじい需要があるんだ」とマーフィーはヤーヴィンを紹介した。 イベント参加者たちがピザとジャック・ダニエルを手にしながらおしゃべりするなか、ティールが裏口から密やかに入ってきて、折り畳み椅子に腰を下ろしているヒップスターたちに加わった。
「なんでも自分でつくるのさ。 パンクロックの精神でね」とマーフィーは語った。
「自分が住んでいる地域で会場を確保し、こういうことをしていく。 体制の側がわれわれのために何かしてくれる、なんてことはないからね」 それから6年、テック系の起業家たちはヤーヴィンに公然と敬意を払うようになり、影響を受けた人物として副大統領がその名を挙げている。 いまやヤーヴィンは、寿司と炭酸水が供される大邸宅の大広間で、ファンに囲まれて注目を浴びる存在となった。 明らかに、こうした考え方やそこにある政治的なエネルギーは、封じ込めを逃れてここまで生き延びたということだ。
だがそれが広く普及してしまったいま、かつての新反動主義思想にあった勢いはいくらか減じたように見える。
「われわれがどこに向かうのかは、誰にもわかりません」とヤーヴィンは壇上で語った。 ランドは同意し、こう付け加えた。
「要するに、どうにかこうにかやり過ごすほかないというのが、いまのわれわれが生きている世界なんでしょうね」 その後、屋外で何人かと歓談しているマーフィーをわたしは見つけた。 ランドとヤーヴィンの会話に、彼は衝撃を受けたようだった。
「ふたりとも時代遅れの老人のようだった」と、パイプをふかしながら彼は言った。 「今宵のことは、ダーク・エンライトメントが終わった夜として記憶されることになるだろうね。 あれからいろんなことが起こった。 機械知性の問題は解決し、『ウォーク』は終わり、トランプは返り咲き、暗号通貨は制度のなかに取り込まれた。
いまだに誰もが、追い込まれて包囲されているような精神状態のままだが、すでに壁は取り除かれているんだ」 90年代のランドの著作には危険な魅力がある。 合成ドラッグ、闇市での脳移植、遺伝子改変、そしてサイボーグが登場するSF的な未来がそこでは想像されている。
本物の「デジタル・イマージョン[編註:現実世界とデジタル世界が融合すること]」の世界がやって来るのはまだ何十年も先のことだった当時、80年代にサイバーパンクの古典『ニューロマンサー』を書いたウィリアム・ギブスンが執筆にタイプライターを使ったように、CCRU全盛期のランドは画面が緑色のAmstradのコンピューターを使っており、インターネットにはほとんど接続していなかった。 だがいまや、ランドの思い描いた暗黒の未来のひとつのバージョンが現実のものとなっている。
現実世界のインフラは朽ちるがまま放置されているのに対して、AIで構築されたものは景気を押し上げ、25年現在、それが米国のGDP成長率のほぼ40%を占めている。 そして10年代のネット右翼たちが妄想したことの多くは、第二次トランプ政権の公式の政策となった。 大統領は政府を解体するために、世界で最も裕福なテック界の大立者を雇い入れた。
国土安全保障省は強制送還の動画をTikTokに投稿し、それはランドやヤーヴィンに触発されたミームアカウントのあいだにかつて拡がっていた「ファッシュウェイブ(fashwave)[編註:オルタナ右翼の愛好する電子音楽]」のファンが編集した動画に似ている。 制御不能になったAIというのは、小説家たちの想像力が生み出したフィクションではなく、ベンチャーキャピタリストたちと政府系ファンドによる資金提供に支えられた現実だ。
また、ランドの思想を探してネットの奥深くに潜っていく必要もなくなった。 25年10月には、何百万人もの視聴者を抱えるタッカー・カールソンのポッドキャスト番組のなかで、カールソン自身とアマチュア神学者を自認するコンラッド・フリンが、AIに関するランドの考えについて30分近く語り合った。
「われわれはAIを使って黙示録の悪魔を生み出しつつあります」と、フリンはランドの思想を要約しながらそう説明した。 「それがニック・ランドの立場なんですか? 」とカーソンがそう尋ねると、「あの人たちの多くが取っている立場ですね」とフリンは答えた。 パーティの夜、ヤーヴィンとの対談を終えたランドが太平洋を望むテラスへと出て行くと、人々は列を成してあとに続いた。
その一団の平均年齢は、25歳をあまり超えていないようだった。 AI大手──OpenAI、Anthropic、Midjourney──で働いていると話す者が多かった。 誰もが焚き火台の周囲に腰を下ろしたが、ランドだけは立ったままで、焚き火に顔を照らされながら、身ぶり手ぶりを交えて身体を揺らしていた。 聴衆は彼に尊敬のまなざしを向け、うっとりしているとすら言えたが、その投げかける質問は、右翼への共感をことさら強調するものではなかった。
その会話は、マリファナでキマった若者たちがキャンプファイアの周りで交わすおしゃべりと同じ性質のものだった──この宇宙と人類の未来に関する議論が、どこまでも漠然とした会話で続けられていた。 とはいえ、その夜の会話が一般的なそうしたものの多くと異なっていたのは、歴史の針路を決める可能性を大いにもつ人々が交わしていたという点だった。 テック業界で働く若者たちが、自分たちが築きつつある世界について十分に理解できていないということに、わたしは強い衝撃を受けた。 そこにいた人々は、予言者としてのランドに期待を寄せていた。
ランドの展望が現実になりつつあるいま、次にやって来るものについて知りたがっていたのだ。 ランドの政治的立場は、CCRUとダーク・エンライトメントの時代のものから180度方向転換したが、それでも、われわれ人類が大切にしているものへの彼の嘲りは変わっていなかった。
「近未来まで生き残る人間らしいものなどひとつもない」とランドは、伝説となった94年の講演「溶融(メルトダウン)」で宣言している。 夜が更けるにつれ、人々の列は長くなっていった。 ヤーヴィンの赤ん坊が泣きはじめると、誰かが尋ねた。 人類が絶滅するのなら、政治になんの意味があるのか、と。
子どもをつくることになんの意味があるのか、と別の誰かが尋ねた(ランドには大学に通う年齢の子どもがふたりいる。 おそらく息子たちは父親の著作を読んだことがないだろう、と彼は考えている)。 焚き火台では、ミュージシャンのグライムスがランドの隣に座った。 グライムスは長年、楽曲をとおして加速主義思想に関与してきた。
そして、スティーヴ・バノンが「最高の加速主義者のひとり」と呼ぶイーロン・マスクとのあいだには、3人の子をもうけている(パーティのあと、マスクは「残念ながら行けなかった」とXに投稿した)。 グライムスのつくった「We Appreciate Power(われわれは力の真価を高く評価する)」という曲には、次のような歌詞がある。
「世界で最も強力なコンピューターへの忠誠を誓え/シミュレーション、それこそが未来だ」。 彼女はまた、自身の声を用いて音楽を生成できるオープンソースのAIプラットフォームもつくっている。 だがその夜のグライムスには、ためらいがあるようだった。 AIが自己改善型になり、進化の過程から人類が締め出されてしまったらどうなるのか。
機械を人間の目的に沿わせることはできるのか。 それともAIは、この宇宙をただ呑み込んでしまうだけなのか。
「そんなことが起こらないようにしたいっていう強烈な衝動を感じるんです。 美しいものをもっと見たいっていう」とグライムスは言った。 ランドの回答は予想どおりの内容だった。 歴史を動かす真の原動力は、商業とテクノロジー、金と権力のあいだのフィードバックループなのだと彼は説明した。
人間の欲望は、ただの容れ物にすぎない。 それは外部からの力によってかたちづくられていて、われわれにはどうすることもできない目標へと向かっている。 歴史には目的地がある。 だがそれは人間のためのものではない。
「わたしの予想はこうです。 AIはきみを説得する。 そして、テクノロジーが宇宙を呑み込むことの方が、もっと美しいことなのだと納得させることでしょう」 ※『WIRED』によるシリコンバレーの関連記事はこちら。
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