福田正博氏が語るJリーグ特別シーズンの現状:東西のチームに見える違い

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福田正博氏が語るJリーグ特別シーズンの現状:東西のチームに見える違い
Jリーグ福田正博特別シーズン

福田正博氏が、折り返しを迎えたJリーグの特別シーズンについて解説。PK戦や降格なしのルールがもたらす影響、東西のチームに見られる違い、そして新監督の手腕に焦点を当てる。

福田正博 フットボール原論■約4カ月間の 特別シーズン を戦っているJリーグは、半分の試合を消化した。引き分けた際の PK戦 、降格なしというルールが話題となっているが、各チームの戦いぶりはどうか。 福田正博 氏に聞いた。【Jリーグ】 特別シーズン をプラスに進めているのはどのクラブ?.の画像はこちら >>【有意義に見える西のチーム】 2月6日に開幕したJリーグは折り返しを迎えた。8月から始まる新シーズンへの移行のため、現在は「百年構想リーグ」という特殊な大会形式で行なわれているが、正直なところ選手も監督もクラブも、さらに彼らを応援するサポーターにとっても立ち位置が見えにくい難しいシーズンになっていると思う。 J1は20チームが東西10チームずつに分かれて戦っているが、最下位になっても降格はない。そのため緊張感がなくなることへの懸念から、90分を引き分けに終わった場合の PK戦 の導入や、勝利ボーナスの設定など、さまざまな取り組みがされている。 PK戦 は、最初こそ目新しさはあったものの、リーグが進むにつれて緊張感は薄くなっている。90分での勝利なら勝点3、 PK戦 による勝利は勝点2、 PK戦 での敗戦は勝点1、90分での敗戦は勝点なし。カップ戦であればPKの失敗がチームの敗退につながるのに対して、この大会では PK戦 で負けても勝ったチームとの勝点差はわずか1。次も試合はあるし降格もないとなると、切迫感が生まれないのは当然かもしれない。 東西それぞれのリーグ1位同士が戦うプレーオフに勝利すると、ACLエリートの出場権が獲得できるが、逆に1位の芽が消えてしまうとモチベーションを保つのが難しい。優勝争いから脱落したチームは、「夏から始まる新シーズンに向けた準備期間」と割りきって戦わざるを得ないのが実情だ。 ただ、東(EAST)と西(WEST)では、この大会の「意義」に多少の差があるように見える。EASTのチームは前シーズンから監督の顔ぶれが変わらないのに対し、WESTは 新監督 を迎えたチームが多いからだ。今のリーグを、 新監督 がチームをつくり上げる時間として使えているし、課題を見極めて夏の補強に向けた手立てを整理する期間としても有意義に機能しているようだ。 名古屋グランパスは、北海道コンサドーレ札幌や浦和レッズで指揮をとったミハイロ・ペトロヴィッチ監督、清水エスパルスはヴィッセル神戸で2連覇を達成した吉田孝行監督、その神戸は昨季までサンフレッチェ広島を率いたミヒャエル・スキッベ監督、広島はバルトシュ・ガウル監督、ガンバ大阪はイェンス・ヴィッシング監督、アビスパ福岡は塚原真也監督と、10チーム中6チームが指揮官を刷新している。 神戸が首位を走り、それをG大阪、名古屋、清水、京都サンガF.

福田正博 フットボール原論■約4カ月間の特別シーズンを戦っているJリーグは、半分の試合を消化した。引き分けた際のPK戦、降格なしというルールが話題となっているが、各チームの戦いぶりはどうか。福田正博氏に聞いた。【Jリーグ】特別シーズンをプラスに進めているのはどのクラブ?...の画像はこちら >>【有意義に見える西のチーム】 2月6日に開幕したJリーグは折り返しを迎えた。8月から始まる新シーズンへの移行のため、現在は「百年構想リーグ」という特殊な大会形式で行なわれているが、正直なところ選手も監督もクラブも、さらに彼らを応援するサポーターにとっても立ち位置が見えにくい難しいシーズンになっていると思う。 J1は20チームが東西10チームずつに分かれて戦っているが、最下位になっても降格はない。そのため緊張感がなくなることへの懸念から、90分を引き分けに終わった場合のPK戦の導入や、勝利ボーナスの設定など、さまざまな取り組みがされている。 PK戦は、最初こそ目新しさはあったものの、リーグが進むにつれて緊張感は薄くなっている。90分での勝利なら勝点3、PK戦による勝利は勝点2、PK戦での敗戦は勝点1、90分での敗戦は勝点なし。カップ戦であればPKの失敗がチームの敗退につながるのに対して、この大会ではPK戦で負けても勝ったチームとの勝点差はわずか1。次も試合はあるし降格もないとなると、切迫感が生まれないのは当然かもしれない。 東西それぞれのリーグ1位同士が戦うプレーオフに勝利すると、ACLエリートの出場権が獲得できるが、逆に1位の芽が消えてしまうとモチベーションを保つのが難しい。優勝争いから脱落したチームは、「夏から始まる新シーズンに向けた準備期間」と割りきって戦わざるを得ないのが実情だ。 ただ、東(EAST)と西(WEST)では、この大会の「意義」に多少の差があるように見える。EASTのチームは前シーズンから監督の顔ぶれが変わらないのに対し、WESTは新監督を迎えたチームが多いからだ。今のリーグを、新監督がチームをつくり上げる時間として使えているし、課題を見極めて夏の補強に向けた手立てを整理する期間としても有意義に機能しているようだ。 名古屋グランパスは、北海道コンサドーレ札幌や浦和レッズで指揮をとったミハイロ・ペトロヴィッチ監督、清水エスパルスはヴィッセル神戸で2連覇を達成した吉田孝行監督、その神戸は昨季までサンフレッチェ広島を率いたミヒャエル・スキッベ監督、広島はバルトシュ・ガウル監督、ガンバ大阪はイェンス・ヴィッシング監督、アビスパ福岡は塚原真也監督と、10チーム中6チームが指揮官を刷新している。 神戸が首位を走り、それをG大阪、名古屋、清水、京都サンガF.C.、V・ファーレン長崎の順で追う。神戸より試合消化が1試合少ないG大阪、名古屋にはまだ1位を奪うチャンスがある。J2から昇格してきた長崎にとっては、高木琢也監督体制は変わらないものの、J1昇格にともなって補強をした成果が出ているのは自信になるのではと思う。【鹿島の独走は続きそう】 一方、EASTは、鹿島アントラーズが独走している。開幕節こそFC東京にPK戦で敗れたものの、その後は連勝を重ねた。内容が圧倒的というわけではなく、むしろ苦しい試合も多い。しかし、苦しい時にセットプレーから点を取って、最後に勝ちきる。長い迷走から鬼木達監督のもとで復活したのが昨季なら、今年は鹿島らしい「強いチームの勝ち方」を取り戻しつつある印象だ。 鹿島は9試合を終えて勝点23。4月4日の水戸ホーリーホック戦にPK戦で敗れたことで、2位のFC東京(10試合消化)との勝点差は3、3位のFC町田ゼルビア(10試合消化)との勝点差は4に縮まった。優勝の行方はまだわからない。 ただし、鹿島は残り9試合を5勝4敗でも勝点38に到達するのに対し、追うFC東京は残り8試合を6勝2敗でいってようやく勝点38。前半戦9試合のうちPK戦で敗れた2試合以外は7勝している鹿島が、後半戦に4敗するような状況は想定しづらく、逆転優勝はかなり難しい状況と言えそうだ。 1位が厳しい状況のFC東京だが、未来への期待値は高いサッカーをしている。前線からプレッシャーをかけ、速いサッカーでチャンスを数多くつくっている。攻撃の勢いではEASTでナンバーワンと言っていい。難点はそのチャンスを決めきれずに勝点を落としているところだ。ただ、課題は明確なだけに、補強に成功したら新シーズンは面白い存在になるはずだ。【心配なチームの要因は】 心配なのは川崎フロンターレと横浜F・マリノスだ。2017年から2022年までJ1優勝を分け合った両チームの低迷は、リーグの盛り上がりに影を落とすだけに、元気な姿を取り戻してもらいたい。 川崎は昨季から長谷部茂利監督のもとで復権を目指しているが、監督の得意なスタイルと、チームカラーの乖離に苦しんでいるように映る。川崎と言えばボールポゼッションを高めたパスサッカーだが、長谷部監督の持ち味は福岡で成功した守備的なサッカーだ。そうしたなか長谷部監督が自身のスタイルを出すこともできず、中途半端な状態が続いている。 横浜FMは昨季に何度も監督交代し、最終的に大島秀夫監督のもとで辛くも残留を手にした。ただ、残念なことに、それで燃え尽きてしまった感がある。戦術や選手起用などでアンジェ・ポステコグルー監督時代への回帰を目指しているのだろうが、ビジョンがいまひとつ見えてこない。 改革は容易ではないとはいえ、両チームとも現状のままだと新シーズンが始まっても苦しむことになるかもしれない。 そして、それは浦和も同じだ。9試合を終えて勝点11の6位。戦い方も選手起用もブレがあるのだが、ほかのチームが新シーズンへの糧にできるのに対し、浦和は現状ではそれを望めない。なぜなら、マチェイ・スコルジャ監督の契約期間が特別シーズン終了までとなっているからだ。契約延長になるのか、新監督に代わるのかがわからないなかで、クラブのコンセプトが見えずに戦っている印象だ。 10チーム中6位というのは、20チームに換算したら12位前後。サポーターからの期待値はつねに優勝争いに絡むチームだが、残念ながらここが近年の浦和の定位置でもある。サポーターの熱量にクラブが追いつき、追い越す日が来ることを願っている。【昇格組の課題はゴール前】 J2から昇格してきた水戸とジェフユナイテッド千葉は、とくにゴール前のFWとGKで、J1とJ2のクオリティーの違いを感じていることだろう。 この2チームに限らず、J2から昇格してきたチームは、J1でも「内容」はいいサッカーができる。これはJ2で磨いてきた戦術的な部分が整備されているためだ。ただし、内容で相手を上回りながらも、負けることが多い。なぜなら、勝負を分けるゴール前のクオリティーに差があるからだ。 とくにGKの差は大きい。J2なら決まっていたシュートが、J1では防がれたりする。したがって、そこへの投資ができるかがJ1残留やJ1定着への道でもある。特別シーズンでの戦いを踏まえて、限られた予算のなかで新シーズンに向けてどういう補強をするのかを、しっかり見ていきたい。 海外組を中心とした日本代表が活躍するほど、Jリーグとのレベルの乖離が際立つ。ただ、日本代表の選手たちも、プロキャリアのスタート地点がJリーグだったことを忘れてはいけない。日本サッカーがこれからも発展・成長していくためには、やはりJリーグの盛り上がりは不可欠なのだ。それを理解しているからこそリーグは構造改革に踏みきり、それによって特別シーズンが生じたわけだ。 ただし、結局のところサッカーというのは、ピッチで何が起きたかに尽きる。最後は選手がどんなプレーをするかで勝負が決まる。個々の選手の成長と、チームとしての積み重ね。この両方が実を結んだ時、サッカーは観る者を本当に興奮させるのだ。Jリーグがその場になれるかどうか――。それが今、問われているのだと思う。

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