バズ・ラーマン監督が情熱を注ぐ、エルヴィス・プレスリーとメットガラ

バズ・ラーマン / Baz Luhrmann News

バズ・ラーマン監督が情熱を注ぐ、エルヴィス・プレスリーとメットガラ
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オースティン・バトラー主演の『エルヴィス』(2022)がキング・オブ・ロックロールの神話を鮮やかに蘇らせたのなら、『EPiC/エルヴィス・プレスリー・イン・コンサート』は、生身のエルヴィスにぐっと近づく一作だ。約60時間に及ぶ未公開映像と音源を掘り起こし、エルヴィスを現代に再生させたバズ・ラーマン。4月末に来日した名匠が、本作の舞台裏から創作の哲学、そしてメットガラに至るまでを語る。

──『EPiC』(最高にすごい)というタイトルからして秀逸ですが、最初からこのタイトルが頭にあったのでしょうか?

「どうして今まで誰も思いつかなかったんだろう? 」と思うほど、自然に出てきたものなんです。 この作品は、単なるドキュメンタリーでもコンセプトフィルムでもありません。 何かそれ以上のものになると分かっていく中で、いくつかタイトルを考えました。

そんなときにふと、「EPiC(Elvis Presley in Concert)」がいいのではないかと思い至ったんです。 ──本作を通してエルヴィスの圧倒的なライブの熱量を感じましたが、監督が最初に彼と出会ったときの印象を教えてください。 どこに惹かれたのでしょうか? エルヴィスとの出会いは、私がまだ幼く、小さな田舎町に住んでいた頃でした。

地元の映画館で、いわゆる少しチープな作品やマチネ上映がよくかかっていて、その中にエルヴィスの映画もあったんです。 それがきっかけで彼を知り、特に初期作品には夢中になりましたし、70年代の活動もリアルタイムで触れていました。 ただ、この映画はファン心から作ったわけではありません。 というのも、その後私の音楽的関心は広がり、オペラやデヴィッド・ボウイに惹かれたり、自分でも音楽を作るようになったりしたからです。

エルヴィスを改めて見つめ直したときに関心があったのは、むしろアメリカにおける「売ること」と「売られること」という関係性でした。 人が商品として扱われる構造を探ることのほうが、大きなテーマだったのです。 そして今回の作品につながる映像との出会いは、本当に偶然でした。 カンザスの塩鉱にそうした映像が眠っているらしいという噂を耳にしたのが始まりです。

──その噂を信じ、結果的に膨大な未公開アーカイブを発見できたというのはすごいですね。 『エルヴィス』(2022)を作っているときに、「もしかしたら実在するのではないか」と思ったんです。 もし存在するなら、それらを映画に活用すれば、巨大なセットや何百人ものエキストラを用意せずに済むかもしれないと。 ただ、塩鉱に入るにはかなりのコストがかかります。

それでも人を送り込み、まるで『レイダース/失われたアーク』(1981)のように扉をこじ開けて中に入ったところ、69箱ものフィルムが見つかりました。 そこから映像に対応する音声を探すのに2年かかり、ピーター・ジャクソンとともにIMAXクオリティまで修復しました。 この作品はぜひIMAXで観ていただきたいですね。 そのために音響も作り込んでいますから。

これは単なる“エルヴィスファン向け”の作品ではありません。 音楽やファッションに関心がある方であれば、ひとりの特異なアーティストの姿として楽しめるはずです。 エルヴィスは独自のスタイルを持ち、スタイリストをつけることもほとんどありませんでした。 メイクも自分で行い、50年代のもみあげやピンクのスーツもすべて自身の発想です。

髪型も複数のポマードを使い分けて質感を変えていましたし、ジャンプスーツのアイデアも彼自身のものです。 私たちはこれを“エルヴィス美学”と呼んでいますが、その影響は計り知れません。 ボブ・ディラン、ポール・マッカートニー、デヴィッド・ボウイなど、あらゆるアーティストが彼の影響を語っています。 ボウイは私の親しい友人で、かつては近所に住んでいて、一緒に音楽を作ることもありました。

彼は「エルヴィスと同じ日に生まれた」と話し、ルックの面でも常にどこかにその要素を取り入れていました。 ミック・ジャガーのジャンプスーツも、実はエルヴィスの影響ですが、当時はあまり知られていませんでした。 ハリー・スタイルズも『エルヴィス』のオーディションの際、ジャンプスーツを着ることをとても楽しみにしていて、ステージ衣装に取り入れていますよね。

──本作には70年代のフィルムを多く使用されていますが、エルヴィスの全盛期は50年代という印象があります。70年代の映像にはどのような意味があるのでしょうか? 1990年代の頃から感じていましたが、日本では50年代が好まれ、70年代はやや野暮ったいという印象があったように思います。 かつて原宿では50年代風のスタイルが主流でしたからね。 エルヴィスが白いジャンプスーツを着るようになったのは70年代で、ちょうど人気の下降期と重なります。 そのため、彼を揶揄するときのイメージとして、この時代の姿が使われるようになってしまった。

しかし本作を観ていただければ、当時の彼がいかにパワフルだったかがわかるはずです。 ──本作の醍醐味は、エルヴィス自身の言葉で語られる点だと思いますが、物語はどのように構成されたのでしょうか? 壁にテーマを貼り出して、整理しながら構成していきました。 手元の素材をもとに、彼の歌や言葉がこれまで見えていなかった側面をどう浮かび上がらせるかを考えたのです。

そうすることで、断片的な素材の内側に入り込むことができる。 そして音声が見つかるたびに、それに導かれるように組み立てていきました。 非常に新鮮な体験でしたね。 次の監督作『Jehanne d'Arc(原題)』の素材も、同じように69箱分くらい見つかればいいのになと思っています(笑)。

そうすれば馬や鎧を用意する必要もなくなりますから。 ──今回の作品ではスターとしてのエルヴィス以上に、人間的でユーモラスな側面が印象に残りましたが、監督にとって最も意外だった彼の一面は? これまでマイケル・ジャクソンやマドンナ、プリンスとも仕事をしてきましたが、彼らはみな素晴らしい才能の持ち主ですが、ある種の決まったスタイルでパフォーマンスをしている。 でもエルヴィスは違った。

彼が次に何をするのか、誰にもわからない。 完全に即興的で、同時にとても無防備でもあったのです。 スタイリッシュであるだけでなく、弱さやユーモアも併せ持っていた。 その多面性と人間味こそが魅力であり、共感を呼ぶ理由だと思います。

なかでもいちばん驚いたのは、彼がどれほどユーモラスだったかという点ですね。 ──エルヴィスの俳優としての才能について、どのように評価していますか? 彼は初期の映画でとてもいい演技をしているんです。 『カサブランカ』(1942)のマイケル・カーティスが監督した『闇に響く声』(1958)は本当に良かった。

エルヴィス自身、もっといい映画に出られなかったことを悔やんでいました。 『スター誕生』(1976)でバーブラ・ストライサンドと共演する話もあったし、『ウエスト・サイド物語』(1961)の話もあったのに、マネージャーのパーカー大佐がそれを潰してしまった。 ほかにも出演の話はいくつもあったはずで、本来ならもっともっと俳優としての可能性を発揮できたはずなので、本当に惜しいと思っています。 ──以前、作品選びに関して、「自分が作りたいものではなく、必要とされるものを作る」とおっしゃっていたのが印象的でした。

ご自身の作品はとてもパーソナルな印象もあるのですが、この言葉の真意を教えてください。 とても大事なことなので、少し説明させてください。 もちろん「これをやりたい」と思うことはたくさんあります。 たとえば「ジェームズ・ボンド映画を撮りたい」と思うこともありますよ。

ものすごく楽しそうですしね。 あらゆる可能性を考えれば、もっと気楽でストレスの少ない選択肢はいくらでもある。 でも、それはあくまで「やりたいこと」です。 そこから一歩引いて、「いま必要なのは何か」と考えたとき、私にとってはジャンヌ・ダルクの物語になるんです。

百年戦争の最中、年老いた男たちが世界を支配している状況の中で、地方の小さな町からやって来た17歳の少女が歴史を変える──そういうテーマは、まさに今こそ必要だと思う。 彼女のような存在が現れて、この世界を彼らの手から引きはがす必要があると本気で思っています。 だから、もし2年後に映画を出すとしたら、それがふさわしい題材だと考える。 それがつまり、自分の欲望ではなく、「いま世界に必要とされているものは何か」を基準に選ぶということなんです。

……とはいえ、今はヴォーグの仕事で忙しいんですけどね(笑) ──メットガラが迫っていますよね(笑)。10年以上にわたり、メットガラのコンサルティング・クリエイティブ・ディレクターを務めていますが、その面白さと難しさはどこにありますか? 非常にユニークな仕事で、楽しんでやらせてもらっていますよ。 すべてはアナ・ウィンターの手腕によるもので、彼女はメットガラを「ファッション界のオリンピック」とも言える存在に育て上げました。 実際、非常に大きな注目を集め、約3800万ドルもの資金を生み出し、美術館全体を支えています。

ちなみに、私もボランティアとして無報酬でやらせてもらっています。 メットガラの面白さはレッドカーペットにあります。

「誰が何を着ているか」がリアルタイムで共有される一方で、会場内はアカデミー賞とは違って競争ではありません。 アカデミー賞の場合、20分もすると誰が勝つかが見えてきて、少し興ざめしてしまうこともある。 でもメットガラはそうじゃない。 毎年「ここでしか見られないショー」を作ることが求められます。

昨年はファッションの歴史から始まり、アッシャー、そしてスティーヴィー・ワンダーへとつながる構成にしました。 そうした特別な体験を作るのが楽しいんです。 細部に至るまで徹底的に考え抜きます。 ナプキン1枚に至るまで(笑)。

大変ではありますが、彼女と仕事をするのは本当に楽しいんです。 ──ものすごく豪華なショーなんですね。 会場内を覗き見できないのが残念です。 翌年のメットガラの準備はいつ頃から始まるのでしょう?

メットガラの翌日には、すでに次の年の準備が始まっています。 実際、一週間もすれば大枠は決まります。 アナがアンドリュー・ボルトンとともに構想をまとめるのですが、このアンドリューが非常に重要な存在です。 トム・ブラウンのパートナーでもあり、卓越した才能の持ち主なんです。

たとえば、(2011年の)アレキサンダー・マックイーンの展覧会をご覧になったことはありますか? 非常に幽玄で印象的なものでした。 彼には、そうした空気を空間として立ち上げる力がある。 とはいえ、私は今回のテーマ「Fashion is Art」は、特に難しいものだと思っています。

ファッションをアートとして捉えるかどうかという問題に直結するからです。 長年の友人であるミウッチャ・プラダはこの点に慎重で、服をアートとは考えていません(ファッションは生活を向上させるためのものであり、実用性が不可欠だという考え方を持っているため)。 でも私は違う。 服もまた、ひとつの芸術表現だと考えています。

……と、つい話しすぎてしまいましたね。 いいスクープになったんじゃないですか(笑)。 『EPiC/エピック エルヴィス・プレスリー・イン・コンサート』 監督:バズ・ラーマン 出演:エルヴィス・プレスリー 配給:パルコ ユニバーサル映画 5月15日よりIMAX先行上映、5月22日より2D(通常版)全国公開 https://www.universalpictures.jp/micro/epic Interview & Text: Rieko Shibazaki READ MORE 『エルヴィス』撮影の舞台裏に迫る! オースティン・バトラーの役作りから「声」の再現まで 似てる?

映画『エルヴィス』のキャストと実在の人物を徹底比較 ツイッギーが語る、60年代ファッションの革命 ファッション業界の“リアル”を捉えた珠玉のドキュメンタリー15選 今こそ観返したい! 気分が上がる名作映画23選 VOGUEエディターおすすめの記事が届く── ニュースレターに登録

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