1960年代から70年代にかけてNASAの初代主任天文学者を務めたナンシー・グレース・ローマン氏の功績を称え、命名された新型宇宙望遠鏡が、早ければ9月初旬に打ち上げられる予定です。ハッブル宇宙望遠鏡の実現に大きく貢献したローマン氏を「ハッブル宇宙望遠鏡の母」と呼ぶことに由来します。
1960年代から70年代にかけて米航空宇宙局( NASA )の初代主任天文学者を務めた ナンシー・グレース・ローマン は、ハッブル 宇宙望遠鏡 の実現に多大な貢献をしたことから「ハッブル 宇宙望遠鏡 の母」とも呼ばれている。
NASAが早ければ9月初旬にも打ち上げるナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡は、彼女のさまざまな功績を称え、その名にちなんで命名された。 ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡は、ハッブル宇宙望遠鏡と同じ2.4mの主鏡をもつ。 解像度と感度は同等だが、視野は少なくとも約100倍にもなるという。 この次世代宇宙望遠鏡の打ち上げについてNASAは遅くとも2027年5月としてきたが、このほど計画が大幅に前倒しされ、2026年9月初旬の打ち上げを目指すことになった。
そのミッションはいかなるもので、どんな成果が期待されているのか。 以下に解説していこう。 ダークエネルギーに関する謎の解明 ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡の主要なミッションのひとつは、ダークエネルギーに関する謎の解明だ。 1920年代の末にエドウィン・ハッブルは、銀河が互いに遠ざかっていることを発見した。 しかも、遠くの銀河ほど速く遠ざかっているという。
この“膨張する宇宙”の発見は当時一般に信じられていた“静止した宇宙”観を覆すものだった。 宇宙は惑星などの通常の物質のほか、光を放たない仮説上の正体不明の物質であるダークマター(暗黒物質)などの物質で満ちている。 このため宇宙が膨張しているとしても、その速度は物質の重力に引かれて徐々に遅くなっていくはずだ。 ところが、観測的な事実はこの予想に反している。
そのひとつが、超新星爆発の一種であるIa型超新星爆発の観測結果だ。 Ia型超新星爆発は、白色矮星に伴星からガスなどの物質が降り積もるなどして一定の質量に達した場合に、暴走的な核融合反応が起きることで発生すると考えられている。 その最大光度はほぼ一定であることが知られているので、遠く離れれば離れるほど暗く見える。 そこで、この絶対光度と地球からの観測で得られた見かけ上の光度を比べれば、Ia型超新星爆発が起きた銀河までの距離を高い精度で推定できるわけだ。
この手法に基づいて、遠方の銀河で起きたIa型超新星爆発を観測したところ、宇宙の膨張の速度が一定であると仮定した場合に比べて、実際に観測された見かけの光度はより暗い。 すなわち実際は、より遠くに位置していることが判明したのだ。 これは宇宙の膨張が加速していることを示している。 この発見により、カリフォルニア大学教授のサウル・パールムッター、オーストラリア国立大学教授のブライアン・シュミット、ジョンズ・ホプキンス大学教授のアダム・リースの3人(肩書きは当時)が、2011年にノーベル物理学賞を受賞している。
このように宇宙の膨張を加速させている原因として仮定されているのが、ダークエネルギーだ。 この未知の力は、宇宙全体のエネルギー密度の約68%を占めるとされている。 その正体や振る舞いなどについてはよくわかっておらず、現代天文学における最大の謎のひとつになっている。 ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡は打ち上げ後、地球から見て太陽と反対側に約150万km離れたL2(ラグランジュ点2)に到達し、数千個のIa型超新星爆発を観測する計画だ。
L2付近では、ほかにもジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡などが運用されている。 対象となるIa型超新星爆発は非常に明るいので、初期の宇宙で起きたものさえ観測できる。 特にナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡に搭載されている広視野カメラ(WFI)は赤外線で観測できるので、宇宙の膨張によって波長が引き伸ばされた初期の宇宙からの光の観測に適しているという。 初期から現在までの宇宙の歴史を通じて宇宙の膨張がどのように変化してきたのかを詳しく調べることは、ダークエネルギーに関する理解を深めることになるだろう。
ダークマターに関する謎の解明 ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡のもうひとつの重要なミッションが、ダークマターに関する謎の解明だ。 渦巻銀河やレンズ状銀河などの円盤状の構造である円盤銀河は、中心付近から周辺までほぼ同じ速度で回転している。 このため電磁波で観測できる通常の物質の質量だけを前提に考えると、周辺の回転速度は中心付近よりも遅くなければおかしい。 そこで浮上したのが、銀河には質量をもつが電磁波では観測できない未知の物質が存在しているのではないか──という仮説である。
この仮説上の未知の物質がダークマターで、全宇宙の約27%を占めると考えられている。 電磁波では観測できないが質量をもつダークマターの性質を踏まえて考案されたのが、「重力レンズ効果」と呼ばれる現象を利用した観測手法だ。 大きな質量をもつ天体の周辺では時空がゆがむので、その背後に存在する天体(光源)からの光が曲げられて増光したり、ひずんだりする。 この現象を重力レンズ効果と呼ぶ。
ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡が観測するのは、そのなかでも弱い重力レンズ効果である。 この効果による銀河の形のゆがみはごく微小で、個々の銀河を見ただけでは検出できない。 しかし、数億個以上の銀河の形状を統計的に解析すれば、ダークマターの塊がどこにどれだけ存在するのかを浮かび上がらせることができる。
この手法を使用してナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡は数億個以上の銀河の正確な位置や形状、そしてその像が手前の質量によってどのようにゆがめられているかを測定し、ダークマターと通常の物質の大規模な分布を明らかにすることになる。 これによりダークマターに関する理解が、より深まることになるだろう。 太陽系外惑星の直接撮影 ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡は、太陽系外惑星の直接撮影にも挑むことになっている。 この挑戦において威力を発揮するのが、もうひとつの主要な観測装置であるコロナグラフだ。
太陽系外惑星には主星と呼ばれる非常に明るい恒星が存在するので、直接撮影することが難しい。 そこで主星の明るい光をさえぎることで、暗い天体や現象を観測できるようにするのがコロナグラフである。 ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡に搭載された新しい装置は、既存の宇宙望遠鏡に搭載されたコロナグラフと比べて最大で約1,000倍もはっきりと太陽系外惑星を撮影できるという。 重力マイクロレンズ効果を使って太陽系外惑星を探すミッションもある。
重力マイクロレンズ効果とは重力レンズ効果の一種で、恒星や惑星などの比較的質量が小さい天体によって引き起こされる。 手前の恒星が背後の星の前を横切ると、その重力がレンズのように働いて背後の星の光が一時的に明るくなる。 このとき手前の恒星が惑星を伴っていると、明るさの変化に特徴的なパターンが現れるのだ。 ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡は重力マイクロレンズ効果に加えて、惑星が恒星の手前を横切る際の減光を検出するトランジット法でも太陽系外惑星を探索する。
トランジット法ではマイクロレンズによって数億個の恒星を継続的に観測する過程で、約10万個の太陽系外惑星を発見することが期待されている。 (Edited by Daisuke Takimoto) ※『WIRED』による宇宙の関連記事はこちら。 Related Articles ジェイムズ・ウェッブ望遠鏡が「最古の銀河」観測記録を更新。 宇宙誕生から2.8億年後 「標準宇宙モデル」は不完全?
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