サンク福岡で受け取った1990年式ロータス・エスプリ・ターボSEで東京を目指す1000kmの道のり。エアコンの故障、奇妙な挙動、操作性の難しさなど、旧車ならではのトラブルが続出するが、それら全てが愛おしいと感じさせる英国製スポーツカーの魅力に迫る。
とにかく暑い! (前話から続く)サンク福岡で真紅の1990年式ロータス・エスプリ・ターボSEを受け取り、いざ東京へ。 総距離1000kmに及ぶ長大な シェイクダウン は、期待と恐怖が入り交じる、あまりにも濃厚な時間だった。 自分のクルマであるにもかかわらず、ステアリングを握る手にはやや汗をかき、心底「運転するのが怖い……」と感じていた。かつての愛車、メルセデス・ベンツ「G350ブルーテック」のそびえ立つような視界と低回転から湧き上がる大トルクとは、すべてが対極だ。 サンク福岡を出発し、ノンパワステの重みを感じながらも、筆者の心にはまだ余裕があった。吹き出し口からは勢いよく冷風が吹き出し、「これなら東京まで快適に自走できそうだ」と助手席のカメラマンと笑い合った。 しかし、旧車の神様は甘さを許してはくれなかった。 サンク福岡を出て、走り出してわずか1分。突如として、頼もしかった冷気はプツリと途絶え、ただの生ぬるい風へと変わってしまったのである。 冗談かと思ったが、何度スイッチを確認しても冷風は戻ってこない。 しかもエスプリの頭上を覆うグラスルーフからは容赦なく陽射しが降り注ぎ、逃げ場のない車内は瞬く間に汗だくになるほどの灼熱地獄と化した。 開始早々に突きつけられた、あまりにもハードで唐突なトラブル。これこそが、30年以上前の英国製 スポーツカー なのだと、汗を流しながら強烈に悟った。 過酷な密室空間のまま福岡都市高速を抜け、九州 自動車 道へと合流する中で、エスプリが持つ二面性を全身で浴びた。 古典的な“ドッカンターボ”の個性は強烈で、低速域でターボが効かない状態では“鈍い”のひと言に尽き、現代のエコカーにも置いていかれそうになるほどだ。 ところが、アクセルを踏み込み過給圧が高まると世界は一変。猛烈な加速とともにスーパーカーを運転しているといった鮮烈な悦びを叩きつけてくる。 高速巡航時の振る舞いにも驚かされた。もっと路面にステアリングを取られるかと身構えていたが、直進安定性が割と高く、意外なほど真っ直ぐに進む。ダンパーをスパックス製に交換し最新のタイヤを履いている恩恵か、乗り心地も決して悪くない。助手席ともちょっと大きな声量であれば会話ができるから、それほど騒がしくもない。 しかし、エスプリの気まぐれはエアコンの突然死だけでは終わらない。走行中、なぜか電動ドアミラーが勝手に動き出すポルターガイスト現象が発生し、デジタル時計にいたっては動いているのか壊れているのかわからない。極めつけは怪しい挙動を示すガソリンメーターだ。針がブレるので、正確な現在量がわからない。 さらに悩ませたのが、極端にオフセットされた小さなペダルレイアウト。運転がしづらく、エスプリを意のままに操るにはソールの薄いドライビングシューズがマストであるのを痛感させられた。もっとも、フットレストがあるのは救いだったが。「ギクシャクする」と形容したくなるほどシフトの入りは渋く、バックギヤに入れるのすら一苦労だった。 エアコンは走り出して1分で息絶え、ミラーは勝手に動き、ペダル操作に神経をすり減らす。文字にすればただの苦行だが、水温計の針は80℃でピタリと安定して機関そのものはすこぶる快調。不思議なことにステアリングを握る筆者の口角は上がりっぱなしだった。すべてにおいて、自分が今まで乗ってきたクルマとは違う、機械と対話しているといった強烈な実感があり、かつてフェラーリを運転した時の感動とも違う喜びに包まれていたからだ。 開始1分で容赦なく牙を剥いたハードな狂気すらも、今となっては愛おしい(もちろん大きな不安もある)。エスプリとの1000kmのハネムーンは、筆者をすっかり気難しい英国製 スポーツカー の虜にしてしまったのである。 【連載バックナンバー】 Vol.
1 今なら、あのクルマに乗れるのではないか? Vol.2 ついに実車と対面! 無謀とも言える決断とは Vol.3 支払総額のリアルと納車前夜の葛藤 Vol.4 納車、そしていざ東京へ! 文と編集・稲垣邦康(GQ) 写真・安井宏充(Weekend.)
ロータス エスプリ 旧車 スポーツカー シェイクダウン 長距離運転
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