大学から陸上部に入って箱根駅伝出場「超異色マラソンランナー」大石巧のMGC、ロス五輪に懸ける思い

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大学から陸上部に入って箱根駅伝出場「超異色マラソンランナー」大石巧のMGC、ロス五輪に懸ける思い
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【不定期連載】箱根からロス五輪へ~MGCに挑むランナーの肖像~第2回大石巧(スズキ)後編箱根駅伝を走ったという事実は同じでも、その物語は一人ひとりまったく違う。区間賞を重ねたスターもいれば、たった一度...

【不定期連載】箱根からロス五輪へ~MGCに挑むランナーの肖像~第2回 大石巧(スズキ)後編大学から陸上部に入って箱根駅伝出場「超異色マラソンランナー」... の画像はこちら >> 箱根駅伝を走ったという事実は同じでも、その物語は一人ひとりまったく違う。

区間賞を重ねたスターもいれば、たった一度の出走で思うような成績を残せなかった選手もいる。 本連載では、2028年ロサンゼルス五輪代表の座を争うMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)出場権獲得ランナーたちに、箱根を走った学生時代の記憶、そして、世界を見据えて42.195kmに挑む現在地を聞く。 第2回は、大石巧選手(スズキ・29歳)。 競技経験ほぼゼロで入学して箱根駅伝出場を勝ち取った城西大時代を振り返った前編に続き、後編では実業団入り後の紆余曲折、そしてMGC、ロス五輪への思いを聞いた。

前編を読む>>>高校時代はサッカー部、陸上初心者の大石巧は箱根駅伝常連校に自ら電話をかけて売り込み【大学卒業後も競技を続けるならマラソンしかない】 城西大を卒業した大石巧は2019年4月、スズキに入社した。 浜松市(静岡)に活動拠点を置く実業団チームだが、なぜスズキだったのだろうか。

「大学で陸上を始めて、4年間は箱根駅伝だけに集中という感じだったんですけど、もし卒業後も続けるならマラソンだなって思っていたんです。 スズキは駅伝を走らず、マラソンだけという環境が魅力的だったのと、あとはやはり静岡のチームというのが大きかったです。 僕は地元が好きなので」 箱根駅伝では3年時に8区4位と好走した。 駅伝も走れる力を持っているが、なぜマラソンだったのか。

「これから日本代表を目指すのであれば、より長い距離のほうがチャンスはあるだろう、やるならマラソンだなと考えたんです。 大学時代に距離走に取り組んだ際も、他の選手より走れていましたし、自信もありました」 スズキの監督を務めるのは、2012年ロンドン五輪マラソン代表の藤原新である。 大石が入社するのと同じタイミングで監督に就任している。 大石はすぐにでもマラソンを走りたかったが、藤原からは「待った」がかかった。

「自分は1年目からマラソンを走りたかったんですけど、藤原さんに『ちゃんと戦うためには、もう少しトラックやハーフ(マラソン)のタイムを伸ばしていかないと。 今、マラソンに出ても"走るだけ"になってしまう。 ちゃんと準備してからにしよう』と言われました」 そこで大石は、入社3年目となる2021年12月の福岡国際マラソンへの出場を目標に定めた。 ところが、コロナ禍になり、参加資格をクリアするためのレースが次々となくなってしまい、間に合わせられなかった。

それでも、同月開催の防府読売マラソンに出場できることになった。 初マラソンだったが、2時間13分09秒で8位入賞を果たした。

「防府の時は、まずはマラソンを経験するということと、次のレースへつながる参加申し込みタイムを持つという目的で、トラックからの直の流れで1カ月くらいしかマラソン練習をしませんでした。 ただ、その練習自体はよくできていたんです。 うまくいけば走れるかなと思いましたが、甘くなかったですね。 十分な脚づくりができていなかったので、後半はキツかった。

マラソンはちゃんと準備しないとダメだなということを経験できたのが収穫でした」【長期故障中も「ちゃんと準備ができれば、自分はいける」】 この後、大石はケガに泣かされ、長いトンネルに入る。 両脚の腸脛靭帯を痛め、治療し、治ったかなと思って走り出すと、また痛みが出る。 特に右脚の痛みが重く、2022年の夏前から1年間、ほとんど走れない状態が続いた。 長期間走れないと気持ちを維持するのが難しくなるが、大石はどのように走れない自分に折り合いをつけていたのだろうか。

「普通、それだけ走れないと腐りそうになりますが、僕には『ちゃんと準備できれば、自分はいける』という変な自信があったんです(笑)。 それを心の支えにしていました。 あと、やはり地元で友人がいるので、みんなに会うとつらい時間を忘れさせてくれた。 いい意味で競技から離れられる環境にいたのも大きかったです」 初マラソンから2年以上が経った2024年3月、東京マラソンに出場した。

脚の痛みはまだ完全に抜けていなかった。 それでも、大石にはひとつの区切りとして走りたい理由があった。 入社時、パリ五輪出場を目指していたんです。 東京は最後の出場枠を決めるレースだったので、可能性はゼロに近いですけど、出たいと思って走りました。

でも、15㎞くらいで痛みが出て、完走するだけになってしまって......。 いつになったら治るんだろうって、さすがに気持ちが折れそうになりました」 東京マラソンは、2時間21分00秒に終わり、走った記録が残っただけだった。 先が見えないなか、治療院を何カ所もまわって完治の道を探った。 すると、それから1年後、光が見えてきた。

「2025年のゴールデンウィークくらいかな、何が決め手になったのかはわからないですが、痛みが消え、ようやくやりたい練習ができるようになったんです。 その時、12月の福岡国際マラソンに向けて準備し、結果を出そうと心に決めました」 足の状態がよくなり、練習メニューをこなせるようになると、徐々に調子が上がっていった。 大石の調子のバロメーターは、ジョグの感覚と接地感にあるという。

「ジョグは、毎日同じ時間に走っていて、そのペースで自分の調子のよさを把握しています。 同じ力感でも、勝手にペースが速くなっていると状態が上がっているということ。 接地感もよく、(前に)進んでいるという感覚が出てきます。 福岡でやれるかもと思ったのはレースの1カ月前でした。

チームメイトの(ライモイ・)ヴィンセントやマイケル(・ギザエ/今年3月末をもって退部)と練習するなか、自分のほうが走れている感覚があった。 これだけできれば福岡は戦えるだろうと思っていました」 2025年12月、大石は福岡国際マラソンのスタートラインに立った。2019年に入社して6年半、初めて自信を持って戦える状態で迎えたマラソンだった。

「レースプランは考えていなくて、30㎞までペーサーについていくだけ。 あとは流れにまかせようと思っていました。 優勝とか日本人トップとかは考えていなくて、MGC(出場権)を獲ることだけでしたね、こだわっていたのは」 なぜ、MGCにこだわったのだろうか。

「ロス五輪に通じるレースというのももちろんありますが、過去のMGCの2レースを沿道で観たんです。 とても盛り上がっていて、声援もすごかった。 両レースともにスタートから設楽(悠太)さん、川内(優輝)さんが飛び出して、他のマラソンにはない展開になって、めちゃくちゃ面白かった。

もしかしたら、箱根駅伝を超えるレースはこれかもしれない、MGCというひとつの作品みたいなレースに自分も関わりたい、そう思っていたので、なんとしてもMGCの出場権を獲りたかったんです」【ようやくマラソンランナーとしてスタートできた】 大石は、福岡国際で2時間08分51秒の自己ベストをマークし、日本人3位となって来年10月開催のMGCの切符を手にした。 早い時期にMGCの出場権を獲れたアドバンテージは大きい。 開催時期の10月を想定して、今季は10月にピークを持っていく練習を行なう。

高温多湿の7、8、9月に高強度の練習を行なうなか、いろいろなことを試すつもりだ。 そして、MGCの先に見据えるのがロス五輪。 大石にとって、どういう位置付けなのだろうか。

「僕はパリ五輪を集大成に考えていたんですけど、大した挑戦もできず、不完全燃焼で終わってしまいました。 ロス五輪に向けては、ようやくマラソンランナーとしてスタートできたなというところがあるので、本気でチャレンジできるので楽しみです。 オリンピックのマラソンは特別であり、花形種目じゃないですか。 その舞台で日の丸を背負って戦いたい。

今はロス五輪が最終目標であり、競技者として目指す一番高い山だと考えています」 スズキからは、すでに大石の他にも、藤村共広が今年3月の東京マラソンで日本人6位、2時間08分49秒をマークし、MGC出場を決めている。

「スズキはマラソンチームなので、これから3人目、4人目とMGCに出場できる選手が出てきてほしいです。 マラソン界に存在感を示していきたいですね。 そうしてマラソンをやりたい選手がどんどん入ってくれるとうれしいですし、マラソンをやりたい力のある選手が来てくれるような環境を、今いる僕らがつくっていくことが大事だなと思っています」 MGCが近づくにつれ、大石の名前やチーム名の露出は増えていく。 マラソンファンからも今以上に注目されることになるだろう。

「これからはMGCを走る選手として見られるでしょうし、そうなると、あまり恥ずかしい走りはできません。 僕は速くて強い選手になりたいですし、その二刀流を実現しないと、MGCで勝てないと思うんです。 そのためにプライドと責任を持って練習に取り組み、MGCを迎えたいです。 どんな景色があるのか、それは箱根以上なのか、とにかく楽しみです」 奇しくも、6月開幕のワールドカップを戦うサッカー日本代表の森保一監督は「まだ見ぬ景色を見てみたい」と語り、大会優勝を目標に掲げている。

高校までサッカーに取り組んでいた大石もまた、MGCでまだ見ぬ景色を見るために走り続ける。 (おわり)大石巧(おおいし・たくみ)/1996年生まれ、静岡県磐田市出身。 袋井高ではサッカー部に所属していたが、箱根駅伝を走ったいとこの姿にあこがれ、3年春に陸上転向を決意。 ほぼ初心者ながら、いくつもの大学に電話をかけるなど進路を模索。

入学した城西大では、3、4年時に箱根駅伝の8区(区間4位、21位)を走った。 実業団入り後はケガに悩まされるも、自身6度目のマラソンとなる昨年12月の福岡国際マラソンで2時間08分51秒(総合4位、日本人3位)を出し、MGC(マラソングランドチャンピオンシップ/2028年ロサンゼルス五輪マラソン日本代表選考会、2027年10月開催予定)出場権を獲得した。

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