鍛えるほど、前向きになり、頭も冴える。筋肉がもたらすのは、体型の変化だけではない。心と知性を同時に更新する“筋トレ新時代”が来ているのだ。
筋肉と知性は両立しない─非常に長い間、そういうイメージが世の中を支配していた。ましてや、筋肉と健康も別のものとして認識されてきたはずだ。それこそ古代ギリシャの時代から、美しいものとしての筋肉が崇拝されてきた名残りだろうか。ギリシャ神話の神々や英雄が筋骨隆々な姿で描かれ、男が男の筋肉を愛したように、肉体的な力を示すものである前に、理想的な肉体は神聖な美の象徴だったのだ。その価値観が今も厳然と残っているということか? でも、昨今この筋肉の意味が大きく変わってきた。基礎代謝が上がり太りにくくなり、男性ホルモン、テストステロンの分泌が高まり、単純に男らしい風貌になっていくのはもちろん、実は筋肉から様々なホルモンが分泌されていて、それが肉体のみならず精神にも良い影響を与えていることがにわかに注目を集めているのだ。 気付いていただろうか。筋肉をつけるとどんどん意欲が高まることを。そして何だか前向きになることを。意欲やポジティブ思考はあくまで精神的な話なのに、精神そのものを変えようとすると実はあまりうまくいかない。変えられるならとっくに変えているという話。だから困難を極め、結果として鬱症状などに発展することもあるわけだが、筋肉こそが実はやる気や前向きさを生んでいるというのだ。 ここには実に3つものホルモンが絡んでいる。それこそ男性ホルモンと成長ホルモン、そしてドーパミン。いずれも意欲をもたらしポジティブな言動に導く作用があり、年齢とともに落ち込むことが多かったりイライラしたりすることも筋力が衰えているからとの説もあるほど。単純に、心身ともに元気になりたかったら筋肉をつける、そういう非常にシンプルな法則が成立するのだ。同時に 筋トレ のツールやメソッドも進化しており、EMSもより効率よく体幹を鍛える進化系機器がMTGなどで次々と開発されている。 今、さらに注目を浴びているのが、筋肉をつけると脳も活性化するという事実。認知症予防等には、脳活ドリルなどをやるより運動して筋肉をつけたほうがよほど効果的だと言われ始めているのだ。一方で、幸福ホルモンのひとつ、セロトニンも筋肉によって分泌されることがわかっている。筋肉で脳も冴え、幸せな気持ちにもなれるなんて以前は思いもよらなかった。つまり、筋肉と知性は両立しないと言われたのは完全な嘘。筋肉をつけるほどに脳が活性していく事実があるのなら、ただムキムキと筋肉を鍛えるのではなく、むしろ人間としての総合的な能力を一斉に高めるためにこそ筋肉をつけるべき。そうした根本的に意味の違う“ 筋トレ 新時代”がもう始まっているのだ。 齋藤薫/KAORU SAITO 美容ジャーナリスト、エッセイスト。美容記事やエッセイのほか、化粧品開発やアドバイザーとしても活躍している。著書に『されど“男”は愛おしい』(講談社)、『“一生美人”力セカンドステージ─63の気づき』(朝日新聞出版)など多数。 編集・橋田真木(GQ).
筋肉と知性は両立しない─非常に長い間、そういうイメージが世の中を支配していた。ましてや、筋肉と健康も別のものとして認識されてきたはずだ。それこそ古代ギリシャの時代から、美しいものとしての筋肉が崇拝されてきた名残りだろうか。ギリシャ神話の神々や英雄が筋骨隆々な姿で描かれ、男が男の筋肉を愛したように、肉体的な力を示すものである前に、理想的な肉体は神聖な美の象徴だったのだ。その価値観が今も厳然と残っているということか? でも、昨今この筋肉の意味が大きく変わってきた。基礎代謝が上がり太りにくくなり、男性ホルモン、テストステロンの分泌が高まり、単純に男らしい風貌になっていくのはもちろん、実は筋肉から様々なホルモンが分泌されていて、それが肉体のみならず精神にも良い影響を与えていることがにわかに注目を集めているのだ。 気付いていただろうか。筋肉をつけるとどんどん意欲が高まることを。そして何だか前向きになることを。意欲やポジティブ思考はあくまで精神的な話なのに、精神そのものを変えようとすると実はあまりうまくいかない。変えられるならとっくに変えているという話。だから困難を極め、結果として鬱症状などに発展することもあるわけだが、筋肉こそが実はやる気や前向きさを生んでいるというのだ。 ここには実に3つものホルモンが絡んでいる。それこそ男性ホルモンと成長ホルモン、そしてドーパミン。いずれも意欲をもたらしポジティブな言動に導く作用があり、年齢とともに落ち込むことが多かったりイライラしたりすることも筋力が衰えているからとの説もあるほど。単純に、心身ともに元気になりたかったら筋肉をつける、そういう非常にシンプルな法則が成立するのだ。同時に筋トレのツールやメソッドも進化しており、EMSもより効率よく体幹を鍛える進化系機器がMTGなどで次々と開発されている。 今、さらに注目を浴びているのが、筋肉をつけると脳も活性化するという事実。認知症予防等には、脳活ドリルなどをやるより運動して筋肉をつけたほうがよほど効果的だと言われ始めているのだ。一方で、幸福ホルモンのひとつ、セロトニンも筋肉によって分泌されることがわかっている。筋肉で脳も冴え、幸せな気持ちにもなれるなんて以前は思いもよらなかった。つまり、筋肉と知性は両立しないと言われたのは完全な嘘。筋肉をつけるほどに脳が活性していく事実があるのなら、ただムキムキと筋肉を鍛えるのではなく、むしろ人間としての総合的な能力を一斉に高めるためにこそ筋肉をつけるべき。そうした根本的に意味の違う“筋トレ新時代”がもう始まっているのだ。 齋藤薫/KAORU SAITO 美容ジャーナリスト、エッセイスト。美容記事やエッセイのほか、化粧品開発やアドバイザーとしても活躍している。著書に『されど“男”は愛おしい』(講談社)、『“一生美人”力セカンドステージ─63の気づき』(朝日新聞出版)など多数。 編集・橋田真木(GQ)




