【街路樹のあの「迷惑害鳥」ムクドリが、もしもこの世からいなくなったら?】 古くから人間の生活圏の近くに暮らし、いつでも見かける身近な野鳥。中でもスズメ、ハ..
ムクドリは、スズメ目ムクドリ科ムクドリ属に属する在来野鳥です。全長21~24cm、頭頂部から後背部、翼にかけては黒褐色、腹部は後背部よりは明るい灰褐色、腰周辺は白っぽく、目の周辺から頬、額、顎から胸元にかけては独特の白い斑が入り、白いお面をつけているようにも見えます。この白い斑模様には個体差があり、また雌は雄に比べて全体に黒みが薄く、明るい色をしていることで性別を見分けることができます。体の黒っぽさと対照的に、橙色のくちばしと黄色い足が鮮やかで目立ちます。食性は雑食で、植物の種子や葉、果実も食べますが、昆虫や小動物などのいわゆる「虫」の採餌が食生活の中心です。このため樹上よりも地上に降りて活動することが多く、その際にはスズメなどの樹上性の鳥が両足をそろえてぴょんぴょんとはねるように移動するのと違い、足を交互に出してのこのこと歩きます。その姿はカラーリングもあいまってペンギンのようにも見え、なかなか愛らしいものです。短い尾羽とがっしりとした足は、地上歩行に適した形状に適応したものです。
こんなムクドリ、近年では大集団を作って街路樹などを塒とする習性から騒音や街路を汚す迷惑害鳥として駆除対策に乗り出している自治体も各地にあり、イメージは最悪。もしかしたら、ハトやカラスより嫌われているかもしれません。 見た目が陽気で溌剌としたヒヨドリや優美なオナガ、かわいらしいメジロやシジュウカラなど、他のおなじみの野鳥と比べると、黒ずんでぼんやりした体色で、ギャーギャーと聞こえるやかましい鳴き声など、一般人はもちろん、野鳥好きの中でもあまり好かれているとは言いがたい存在です。ところが実はムクドリは、かつては人間社会に恩恵をもたらす大益鳥として称えられ、格別な好感をもって見られていた時代があったのです。ムクドリのクチバシはほっそりとしてやや長めです。イカルやスズメのように短く太いくちばしは硬い木の実を割るのに適していますが、ムクドリのくちばしにはそれほどの強度はありません。その代わり可動域が大きく、一膳のお箸のような繊細な働きをします。樹上や草についている虫はもちろん、土中に隠れているミミズなどの環形動物やコガネムシなどの幼虫、ケラ、また密生した草株の隙間などにいるコオロギ類などを探り当て、くちばしを菜箸のように巧みに使って虫を引きずり出して食べてしまいます。このように昆虫類を大量に捉え、一羽のムクドリは一年間に一万匹の虫を食べていると推測されています。日本は温暖多湿で植物や水が多く、昆虫たちにとっ
塒を求めて何万羽もが群飛する様子は壮大で、イワシなどの魚群とも共通し、意思をもった一個の巨大な生命体の動きのように見えます。最近の研究では物理学の「相転移」に近いとも語られます。おそらく、渡り鳥の群れが自然とかりがね型のフォーメーションを取るのと同様、大群の羽ばたきによる大気の攪拌によって、いわばコクーン状の精妙な見えない大気のヴェールを作り出し、ムクドリたちの動きを制御連動させているのでしょうが、詳しいことは未だに謎です。この運動現象は、たとえばドローンの集団飛行などでドローンが互いに衝突しないようなプログラムを構築するのにも役立っています。