日本企業、ウイグル問題に厳正対処 強制労働など人権侵害を問題視 ウイグル族への人権侵害に関しては、中国の工場がウイグル族の強制労働の場となっている可能性が指摘されており、中国での生産を供給網に組み込む国内企業が対応に動いている。
中国新疆ウイグル自治区の少数民族ウイグル族への人権侵害に関しては、中国の工場がウイグル族の強制労働の場となっている可能性が指摘されており、中国での生産をサプライチェーン(供給網)に組み込む国内企業が対応に動いている。環境や社会問題に対する企業の取り組みが注目される中、調達先の工場などで強制労働があれば間接的な人権侵害への加担につながるため、各企業は「厳正な対処」を強調している。
強制労働をめぐっては、オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)が昨年3月、世界の有力企業80社超がウイグル族を強制労働させている中国の工場と取引していた可能性があるとの報告書を発表。この中には日本企業14社も含まれていた。衛星写真や中国側の文献、報道、各社が公表している取引先のリストなどに基づき分析したという。指摘を受けた各企業は事実確認などの対応を急ぐ。東芝は強制労働の疑いがある調達先を調査。「当社や連結子会社の直接取引先ではないことを確認」した一方、東芝がブランド使用を認めている企業で、疑いのある調達先と取引があったケースが判明。「強制労働の実態は確認されなかったものの、昨年以降の開発機種は当該調達先の部品は採用しない」とする。ソニーは「指摘された調達先のうち、サプライチェーン上にある調達先を調べた結果、強制労働の事実は確認されなかった」と反論。シャープや日立製作所、TDKも確認された強制労働の事実はないとする。その一方で、「今後、事実が取引先で判明した場合は断固として是正を求め、改善されない場合は取引停止などの対応も検討する」(シャープ)とする。
企業の短期的な利益追求よりも経営の持続可能性が求められる中、人権を含む社会問題や環境問題への企業責任を重視する投資家からの圧力は強まる。今回の強制労働をめぐる疑惑も対応が遅れれば、企業にとっては重大な経営上のリスクに発展しかねない。