夜通し開かれた野外音楽イベント。空が白み始めても、気にする人はいない。誰かがスマートフォンのカメラを向けた。生を謳歌（おうか）するように軽快に体を揺らす若い男女...
夜通し開かれた野外音楽イベント。空が白み始めても、気にする人はいない。誰かがスマートフォンのカメラを向けた。生を謳歌（おうか）するように軽快に体を揺らす若い男女の背後に、大きな鳥のような黒い点がいくつも写る。パラグライダーに乗ったイスラム原理主義組織ハマスの戦闘員が、死を運びに来た。
ハマスの大規模侵攻を受けたイスラエルはガザの拠点を連日空爆。首相のネタニヤフは「怪物を根絶やしにする」と宣言した。一方、ハマスは通信アプリで音楽イベントから連行した人質動画を公開し、イスラエル側を牽制（けんせい）。交流サイト（ＳＮＳ）上のパレスチナ系アカウントは、空爆に巻き込まれたパレスチナの子供たちの犠牲を繰り返し発信している。それぞれの〝正義〟がネット上で日々量産されていく。２０１７年５月２２日夜、英国中部マンチェスターでもそうだった。屋内競技場マンチェスター・アリーナで行われた米人気歌手アリアナ・グランデの公演が終了し、観客らが退出する中で突如爆発が起き、８歳の少女を含む２２人が犠牲になった。英国の首都ロンドンから電車で約２時間の距離にあるマンチェスター中心部。観光客にも人気のマンチェスター大聖堂の隣接地には、光輪をかたどった白い大理石の記念碑が設置されている。事件から６年以上が経過した今も「訪れる人は後を絶たない」（地元住民）という。マンチェスター在住の会社員、イズリー（３２）は「事件は本当に恐ろしく今も忘れられない。ここに来ると感情が揺さぶられる」と話す。
自由主義と民主主義を尊ぶ英国の価値観の中で育ったアベディがジハード（聖戦）主義に取り込まれたのはなぜか。米メディアはアベディの家族の話として、シリアのイスラム過激派を狙った米軍の空爆作戦の誤爆で、ムスリム（イスラム教徒）の子供が死亡したことに、アベディが憤っていたことを報じている。第１期はソ連のアフガニスタン侵攻に端を発し、世界中のムスリムが義勇兵としてアフガンに集結、対ソ戦としてのジハードなどに身を投じた１９８０〜９０年代。そして今に続く第３期ジハーディズム。その理論を０５年にネット上で発表し、ホームグロウンの蜂起を促したのがシリア人思想家のアブ・ムサブ・アル・スーリだったという（『グローバル・ジハードのパラダイム』ケペル、アントワーヌ・ジャルダン、新評論）。
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