競泳でオリンピック(五輪)2大会出場の伊藤華英さん(38)が「これからの人生と生理を考える」(山川出版社)を執筆した。かつてタブー視されることもあった生理を取り上...
衝撃だった。2016年リオデジャネイロ五輪で中国の競泳選手が「生理で調子が悪く、チームメートに迷惑を掛けた」と敗因を語っていた。現役時代、五輪の大舞台で生理の問題に直面したことがあった。2008年北京五輪のレース本番と生理が重なることが不安になり、コーチと相談して、月経周期の調整を目的とする低用量ピルを飲んだ。しかし、副作用に苦しみ、体重が4、5キロ増えてしまい、本番では思うような泳ぎができなかった。
「当時はコーチも分からなかった。生理をずらせば調子が良くなるだろうと。しかし、実際は生理前のような状態がずっと続いて、調子が良くなかった。ピルが悪いわけではない。もっとより良い選択肢はなかったかと。自分も周囲も生理への知識が足りなかった」女性アスリートが直面する無月経の問題も浮き彫りになった。練習量と食事量のバランスが崩れ、利用可能なエネルギーが不足することで陥りやすい。20歳を過ぎて1回も月経がきてない選手や「命を懸けて練習しているのだから、別に生理がこなくても関係ない」との声もあった。2021年3月に「1252プロジェクト」を仲間と共に立ち上げた。「1252」とは1年間52週のうち、生理が訪れるのは約12週との意味。10代の女子アスリートに対して、スポーツと生理の正しい知識や正しい情報を発信し、啓蒙する。中学、高校、大学に行って授業を開いたり、YouTube配信もしている。今回の著書発売は、その一環でもある。
「男女ともに生理を知ることが大事。10代の無月経は特に危機感を持たなければならない。続けば、骨粗鬆症のリスクがある。また、10代に限らず、子宮内膜症なども大きな課題にもなっている。日本は指導者の8割弱が男性。選手から相談されたとき、何を言えるか。相談される前でも、何ができるか考えてもらいたい」 ◆伊藤華英(いとう・はなえ)1985年(昭60)1月18日、埼玉県大宮市(現さいたま市)生まれ。東京成徳大高−日大−セントラルスポーツ。背泳ぎ選手として同い年で親友の寺川綾さんとともに活躍した。世界選手権は01年から4大会連続で入賞。08年北京五輪100メートル8位。10年から自由形に転向し、12年ロンドン五輪に出場。同年の国体後に引退し、早大大学院−順大大学院。19年に結婚し現在は1児の母。日本卓球協会理事、日本トップリーグ連携機構常任理事。
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