ヒツジの皮から作られる羊皮紙や、ウシの皮から作られるベラムなど、植物の繊維を絡ませながら平らに成形した紙が発明されるまでは、さまざまな種類の動物の皮が筆写に用いられてきました。エクセター大学で考古学を研究するショーン・ドハティ氏率いる研究チームが、中世から近世にかけて作成された法的文書の大部分が羊皮紙を用いていたことを発見し、ヒツジの皮が法的文書の記載に適していた理由を考察しています。
研究チームは、ほとんどの法的文書に羊皮紙が用いられていた原因は「ヒツジの皮の脂質含有量の高さ」にあると指摘。原料として用いられることが多い動物の皮の脂質含有量はそれぞれ、ウシ・ヤギ・ヒツジで、ヒツジの皮が最も多くの脂質を含んでいます。
羊皮紙やベラムの製造工程には、皮に含まれる脂質を石灰を用いて除去する工程が含まれます。そのため、脂質を多く含む羊皮紙は、他の動物の皮を原料とする紙と比べて「層と層の間の隙間」が多く存在し、こすった際に傷が付きやすいとのこと。 羊皮紙に書き込まれた内容をこすり落とすと傷が付くため、「書き込んだ内容をこすり落とした」ことが分かりやすくなります。例えば、以下の文書では、内容を書き換えた部分の色が変化し、書き換えた場所が分かりやすくなっています。」には、「羊皮紙に記された内容を消去すると、必ず傷が残る」と記されているとのこと。研究チームの一員であるジョナサン・フィンチ氏は、「羊皮紙には、内容を書き換えられたことが分かりやすくなるという機能がありました。そのため、羊皮紙は法的文書の不正な改ざんを防止するために用いられていました」と述べてます。
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