ホテルに缶詰めで、食事はカップ麺…欧州選手団が怒った五輪前大会の低レベル(プレジデントオンライン)
いうまでもなくアスリートはコンディション維持のため、さまざまな食事制限や食べるべきものが決まっている。それにしてもこれではバランスが悪い。ところが運営側が「足りないならこれを」と持ってきたのはカップ麺。まったくピンボケな対応は選手らの怒りに火を注いだ。その後も食事の供給をめぐっては、チームの希望と運営側の対応がチグハグな状態が続いた。納得できない選手らは自ら解決するため、慣れない日本語サイトを使って、外部から食料などを取り寄せたという。
「ビタミンが足りないので『選手用にフルーツジュースを』と頼んだら、届いたのは2日後だった」「弁当のラインナップに辟易した選手が、ウーバーイーツをホテルに呼んだ」「生のフルーツがほしいと言っているのに、シロップ漬けのパックが届いた」それでも会期が後半に向かうにつれ、弁当の中身はずいぶん進化したようだ。しかし、途中からそうした「選手が納得できる弁当」を用意できたならば、どうしてそれを最初から用意できなかったのか。大会における飲食物の供給に関しては完全に失敗だったといってよいだろう。飲食物をめぐる「こじれ」に反して、競技会そのものは順調に行われた。大会では日本選手の活躍も目立った。中でも14歳の玉井陸斗選手が高飛び込みで五輪切符を手にしたのは、明るい話題となった。しかしこの報道をめぐり、ある選手は「不愉快」という反応を示した。「日本側の徹底した感染防止措置のおかげで、私たちはコロナ禍以前と同じように練習ができると考えた。選手が密に並んでいたと批判されるのは心外です」
あるチームスタッフからもらった写真には、記者らが間を空けることなく取材にいそしむ様子が映っていた。おそらくメディアは「密」が生じた状況について、直接、選手に質問していないのだろう。「選手らのことを批判する前に、日本の記者の皆さんが密を是正すべきではないでしょうか」。このスタッフは皮肉まじりに指摘していた。「プレ大会は本来、本大会と気候が同条件の1年前に行われるものですが、コロナの影響でそれは無理だった」と同情を寄せるものの、「すべての条件を本番とより近い形に高めて実施されるべき。会場が整備されている前提で、選手たちが本番に向けた微調整を行う機会だと思います。でも、主催者が飲食物で選手の足を引っ張るなんて、運営側のレベルが未熟としか言いようがないですね」と批判。幸いにも大会に関係した438人のうち、コロナの陽性者は水際対策で見つかった1人でとどまり、表向きには成功裏に終了した。しかし、選手対応の最前線は多くの課題を残す結果となっている。
「きっと中止だろう」という“やってもムダ”という意識が、開催準備を進めるスタッフの心にブレーキをかけているように見えた今回の飛び込みW杯。五輪開幕まであと2カ月余り、選手らが安心できる形にこぎつけるにはかなりの追い込みが必要そうだが、果たしてどう決着を見るのだろうか。