クーデター後最大の流血 ミャンマー市民の悲痛な叫び 「国民を守るのが国軍ではないのか」 国軍は非武装の市民に何の躊躇(ちゅうちょ)もなく銃口を向けた。だが、弾圧が繰り返され、流血が日常となっても、市民は国軍への抵抗を続ける構えを見せている。
国民を守るのが国軍ではないのか-。国軍記念日を迎えたミャンマーで27日、兵士や警察官の銃撃により、クーデター以降最悪となる91人の市民が殺害された。自らの威信を誇示する記念日の式典を円滑に実施するために、国軍は非武装の市民に何の躊躇(ちゅうちょ)もなく銃口を向けた。だが、弾圧が繰り返され、流血が日常となっても、市民は国軍への抵抗を続ける構えを見せている。(シンガポール 森浩)
「今日は何を記念した日なのか。テロリストは記念日を血で染めたかったのか」。27日、最大都市ヤンゴンで抗議デモに参加した女性(27)は産経新聞通信員の取材に怒りを隠さなかった。「テロリスト」とは弾圧を繰り返す国軍を指す言葉だ。 27日はヤンゴン各地で数百人規模のデモが相次いで行われたという。同国北西部サガイン地域でのデモ隊は10万人を超えた。国内では15日から携帯電話のデータ通信が遮断されており、デモの呼び掛けは主に口コミで広まった。 兵士らはそうやって集まったデモ隊に武力行使で応じた。26日夜に国軍はデモ参加者に対して「頭部を銃撃する」と予告。兵士らはその言葉通りに明確な殺意を持って銃弾を浴びせかけたもようだ。身体に複数の銃弾を受けた遺体もある。26日は兵士らが市民を路上に座らせた上で、殴る蹴るの暴行を加える映像もインターネット上で拡散した。
ヤンゴンでは1歳の幼児が目にゴム弾を受け、重傷を負った。23日には銃撃で女児(7)が死亡するなど、子供の犠牲者も増える一方だ。会員制交流サイト(SNS)上には「世界のみなさん、ミャンマーの子供を守ってほしい」と呼びかける投稿が相次いでいる。弾圧が進んでも、国軍への抵抗を「反ファシスト革命」と言い表す動きが広がるなど、市民の怒りは収まっていない。ヤンゴンの一部地域ではここ数日、デモの規模が縮小する兆しも出ていたが、全国で多数が殺害された事態を受けて、再燃は必至だ。「国軍は弾圧をやめる気配はなく、市民の戦いも続くだろう。国際社会は私たちを助けてほしい」。ヤンゴンの会社員の男性(29)はこう訴えた。