チームの勝利を、ただひたすらベンチで祈った。山崎伊織投手(24)は最後の打者・丸のバットが回ると静かにうなずき、結果を受け止めた。援護に恵まれず、またしても10勝の壁を越えられなかった。8回114球
6度目の挑戦も初の2ケタ勝利をつかめなかったが、己の仕事は全うした。3回2死三塁から大田に三塁線を破られる先制二塁打を浴びたが、最速150キロの直球にカット、フォークなどを丁寧に投げ、試合をつくった。これで140イニングに到達。シーズンの規定投球回数まで残り3イニングとし「キャンプで出遅れて正直規定にいけるところまでいけると思わなかった。先発としての仕事はできているんじゃないかと思う」と胸を張った。5試合連続クオリティースタート(QS=6回以上自責3以下)。原監督も「よく投げてくれました。頑張りましたね」とねぎらった。
右肘の手術から復帰し、1軍のマウンドに立ったばかりの昨年とは違う。「去年はカットを投げればなんとかなるという感じだった。それが(今年は)投球の幅も広がって、直球で押したり、手詰まりになることが少なくなった」とバリエーションに自信を持てるようになった。私生活でも意識が変わった。「ふるさと納税で頼んで温泉水を飲むようにしている。健康のためにもなるし、肌にもいいんですよ」。昨年までは食事面にも気を配ることはなかったというが、寮を出てからより自分の体と向き合うことが増えた。それも、長くマウンドに立ち続けるためだ。 1点ビハインドの7回2死の打席で代打を送られなかったのは、信頼の証し。あと1勝は遠いが悲観することなく戦い抜く。「最後まで先発ローテで投げることが一番大事。やるべきことをやっていくだけ」。チームは残り4試合で、あと1登板の見込み。「分からないですけど、もし次あったら頑張ります」。ラストチャンスにかける。(水上 智恵)