現代では、ソーシャルメディアなどのテクノロジーが青少年のメンタルヘルスに与える悪影響が注目されています。ところが、イギリスの研究チームがテクノロジーの使用と青少年のメンタルヘルスとの関連を調査したデータを分析したところ、「テクノロジーの使用が青少年のメンタルヘルスを悪化させることを示す明確な証拠はない」との結果が明らかとなりました。
いずれの調査も青少年のメンタルヘルスやテレビの視聴時間について尋ねたほか、MTFはソーシャルメディアにアクセスする頻度について、UndSocはソーシャルメディアの使用時間について、YRBSはスマートフォン・タブレット・ゲーム機などのデジタルデバイスの使用について質問しました。また、3つの調査は縦断的な調査を行っていたため、研究チームはある時点での結果だけでなく、テクノロジーの使用とメンタルヘルスの関連が時間と共にどう変化したのかを分析できたそうです。
分析の結果、「行動に関する問題」「抑うつ状態」「感情的な問題」「自殺念慮」といった青少年のメンタルヘルスの問題と、テレビ視聴やソーシャルメディアの使用における明確な関連性は示されませんでした。「抑うつ状態」はテクノロジーの使用との関連がほとんど見られず、「行動に関する問題」「感情的な問題」「自殺念慮」はテレビ視聴やソーシャルメディアの使用とわずかに関連が見られたものの、関連性は小さなものだったと研究チームは述べています。 また、特に研究チームが重要だと指摘しているのが、「テクノロジーの使用がメンタルヘルスに及ぼす影響は時間と共に変化しなかった」という点です。青少年の「行動に関する問題」や「自殺念慮」とソーシャルメディア・テレビとの関係は時間が経過してもほとんど変化しておらず、「抑うつ状態」はむしろ関係性が減少していました。「感情的な問題」だけはソーシャルメディアとの関係性が時間と共に少し増加していましたが、増加の程度は大きくなかったとのこと。
この結果から研究チームは、「『過去10年間でソーシャルメディアプラットフォームとデバイスが急速に進化し、青少年のメンタルヘルスにとってより有害なものになった』という主張は、現在のデータによって強く支持されるものではありません」と結論付けています。 Vuorre博士は、今回の結果はテクノロジーが10代にとって「完全に良い」または「完全に悪い」と断定するものではないと指摘。若者の生活におけるテクノロジーの役割について結論付けるのは困難であり、オンラインで収集されたデータの多くがテクノロジー企業によって保管されている現状では、科学者の調査にも限界があるとのこと。そこでVuorre博士は、独立した研究者とテクノロジー企業の間で、より透明性の高い研究協力が必要だと主張しました。